第37章 繋ぐいのち、五条と春日の鎹
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「伊~地知、はい、これ報告書~…欲しかったでしょ?あげる」
紙飛行機にした報告書を事務所に入ってすぐ、ドアから振りかぶり伊地知の席に向かって解き放つ。
投手のように当主が放る……ってかあ~!あれ、僕今、最高に超面白い事考えちゃってるね?今年の年末、傑との祓ったれ本舗のネタに入れちゃおうかな~?後で傑のネタ帳にメモして貰おっと。
僕に声を掛けられ、椅子から立ち上がった伊地知が慌てふためきながら両手を挙げて、僕の報告書のトランスフォームした紙飛行機を受け止めようとしてる。そこにすかさず伊地知を指差した僕。
「それ、命名グラディウスっていうんだけど僕の報告書のグラディウスを床に落としたらオマエ、千年殺しの刑ね」
「~~~っ!困ります…っ!ただでさえ座って血行の悪い腰、そこに攻撃を食らったら…っ、あっ!」
慌てふためく伊地知が紙飛行機が滑るように潜っていったデスク下にがた、としゃがみこんでる。僕からは見えないけれど多分取れなかったんだろ。あーあ、床に落としてやんの。
「やったね、やっちゃったね~、ついにやっちゃった!伊地知くーん?」
「すいません!千年殺しだけは勘弁を!」
「オイオイオイオイオーイ、すいません、で済んだら警察要らないでしょー?ここは上司としてしっかりと部下の不始末を指導しなきゃ、だよね~?」
「ヒ、ヒィ~!」
腰を隠しながら後退りしてる伊地知をじりじり追い込む狩りの最中、僕のポケットのスマホが鳴る。任務中のまま音消ししてあるけれどハルカの場合のみバイブレーションの間隔は特別に違うリズムになるように設定してるんだ。
特別なリズムを刻む振動に彼女からか、と伊地知いじりを止め「今回は見逃してあげる」とスマホを手に取って、警戒してる伊地知に片手を挙げ「じゃっ!」と僕は事務室を後にした。