第37章 繋ぐいのち、五条と春日の鎹
一人隣で盛り上がりぐりぐりと頬擦りしてくる悟。彼は頭上でふふっ…と笑い声を漏らし、やんわり抵抗する私にくっついたまま伏黒へと話しかけ、私の目の前の席の伏黒は悟の事を「またか」という呆れた顔で私達をじっと見ている。
いつまでくっついてんねん、と片手でもふもふと頭を押しもう片手で彼側に寄せる手を剥がそうにもどっちも離れず、ノーダメージですと頬擦りも肩を寄せる力も変わらない。やめれ。
「ただ大人しく愛らしい子だと思ってたけど、やる時はやる、怒るべき時に怒れる子だろ~、僕の奥さん。肉達磨は流石にドン引きだけどさ?言葉遣いと思考は呪術師らしく、そんなイカレてる所もまたよきかな!
恵も結婚を意識した恋人を作るならハルカみたいな子を見つけな!」
「……はあ、もう行っていいですか?もう五条先生も合流してますし俺、ここに居る意味ないですよね?」
ノロケモードに入ったって事もあり伏黒は席から腰を上げる。確かに任務終了なんだよね、守ってくれていたし。実際に襲われなくても、伏黒が側に居ることで抑止力もあったはず。
悟が片手を挙げ「お疲れサマーズ!僕が支払いしとくから~!」と言うとむすっとした伏黒が通路側にズレていく。そんな伏黒に私は悟を剥がそうと抵抗してた片手を挙げた。
『伏黒、ありがとね!』
「……ん、」
僅かに片手を挙げてドアベルを鳴らし喫茶店から去っていく伏黒の背中。べったりくっつくのを止めてふたりきりになった席で「忘れてた」と零す悟はカチャ、とグラスの内側にあったスプーンを手に、甘ったるいメロンクリームソーダのかなり柔らかくなったアイスをえぐり取って食べてる。
笑顔な彼はさっきよりもご機嫌マシマシだわ…。
「ただ愛でるべき猫ちゃんだと僕はオマエを可愛がっていたけどさ。ハルカはちゃんとお母さんであると自覚した猫ちゃんだったね。
静かに嵐が過ぎ去るのを待ってるのかな、と思ったらきっちり相手に食らいついて、僕をオマエの所有物って見せつけてさあ~…」