第37章 繋ぐいのち、五条と春日の鎹
「やあ、待たせたねー!恵もありがとう、急な呼び出しに付き合わせてさ…、」
「あなたの事です、こういう面倒事には慣れましたよ」
「そっか!恵はいい子だなあ~……ナデナデしちゃう?ハルカは喜ぶんだけど…」
「遠慮します、触らないで下さい」
今じゃテーブルに水の入ったグラス程度しかない席、私の隣に座った悟は水を持ってきた女性スタッフに「メロンクリームソーダ!」とちゃっかり注文を入れていた。多分、いつもの!でも通用したかもしれない顔なじみくらいなんだけど…。
にこやかな悟の笑顔に私と伏黒はアイコンタクトをして。言葉なくても互いにどうだったんだ?という疑問をぶつけ合ってたと思う。
「……で、かつての許嫁の僕の子妊娠疑惑についてなんだけど…」
固唾を飲み、彼の口元に集中した。信じてるからこそそんなハズはないのだって。でも、実際に検査したというのならその結果は誰だって聞きたいもん。確実に違う相手だって言葉が欲しい、"僕の子供だった"なんて言葉は有り得ないんだ……!
にこ、と笑う悟は随分と溜め、伏黒に「なんです?」と急かされた所で唇を動かした。
「──僕の子じゃない、というか…、」
『というか……?』
彼女自身が悟に疑われ、そして私に言ったように別の男の子供なんだろうと考えていたけれど、事態は思わぬ方向に捻れていた。
悟はまた焦らすように間を空けて続ける。変わらず笑みを浮かべたままに。
「ふたりとも、聞いたことがあるかもしれないね。あの子はね…、"想像妊娠"だったんだよ」
その言葉で私も伏黒も言葉無く互いに視線を合わせ、そして私も彼も悟の言葉に驚いていた…。