第37章 繋ぐいのち、五条と春日の鎹
「とりあえず、何があったか…、近くの喫茶店に入るからあんたの口から話してくれません?その説明だけでも待つ間の時間は潰せるでしょう」
その伏黒のなんとも引いたような視線も感じ、まさか、と天啓を感じた。
『……電話越しに…その…あの……聴こえ…?聴こえ……?』
「ああ、聴いてた、あんたキレると相当ヤバイな……、以前見たあの親父さんの時といい、高専に来る前どっかの組に居たんじゃないのか?」
『わ、忘れて下さい………』
伏黒にはあ、とため息をつかれながらとぼとぼと背に伏黒の体温を感じつつ近場の喫茶店へと向く足。伏黒の影からずるりと玉犬が現れ、周囲を警戒してる。
……悟ひとりではなく伏黒にまでキレた姿を見られたとか…!
「ここで良いか?五条先生の目的の場所からも近いし丁度良い」
『ここで良いです…てか、何回か来たこともあるし』
ここの喫茶店に入ると悟、メロンクリームソーダを良く頼むんだよね、と本人は居ないけれど彼の顔を思い出したら無性に私も飲みたくなってきちゃった。
だからメロンクリームソーダーを注文をして。バニラアイスを沈まないように悟が来るまでの暇つぶしがてら遊ぶようにほじくりながら、さっきあった事についてを伏黒にぽつりぽつりと話していく。
……私の主観で真相は分からない。憎しみも苛立ちも込められて路線から外れた愚痴も出てきそうになりながら。
当事者である私の話を聞き終わり、なるほど…と伏黒は理解していたみたいだ。
ブラックコーヒーを前にした、随分と大人びた年下の彼は真剣な顔してる。
「……確かに、五条先生は昔は女性に関しての手癖は酷かった、けど。あなたに会ってからは至極真っ当になったんだ。結婚してからも、子供が出来たと判明してもずっと……
言い方は悪いかもしれないけど、うざったいくらいにあなたに夢中だったから他の女性に手を出すことはありえない」
『マジ?昔っから悟を見てる伏黒から見ても?』
「マジです」
私よりも昔から悟を知る伏黒がそういうのだから、私が信じた彼で合っている。胸に沸き起こる喜び。悟は信じたままで私だけの人なんだ……!
眉間に皺を寄せ「なにニヤニヤしてんだか…」と言われて即座に口元を隠した。だって、過去に会った時から悟は私に一途な想いをしてたんだって事だもん。