第37章 繋ぐいのち、五条と春日の鎹
キスしてる時とかもまだ通話最中だったらしい悟が随分と間を置いて携帯の相手、伏黒に対して口を開いた。
「あ、ああ、うん…見えた…?僕からも恵の事見えます……、ホント護衛必要あるか過保護かもしんないけど、ヤンキーから仁侠モノになる前に僕の方で決着つけるからさ……頼むね…?ウン、ごめん……」
悟を見上げると小刻みにうんうん頷いてた。
やっと通話も終わり、携帯をしまった彼はいつもの調子で…いや、少しだけ引きながら「あはっ!」と笑顔を見せた。
「僕はオマエのそういう所も僕はひっくるめて好きだよ。好きになったのが人に決められた相手ではなく僕の意思で恋をした、みたらいハルカで本当に良かった」
「さ、とる……さん…?なに、言って…」
絞り出すような微風みたいな声。あのヒステリックな声はもう聴こえない。
……悟。私が悟を誰にも渡さないって独占欲を見せてしまっても、女同士の醜い争いを見せてもそれでも私を好きって言うんだ…。
変。変わった人だなあ、なんて思って私も気を張ってた気持ちからガスを抜いたように、斜め上の彼を見上げてへらっと笑った。恨みも憎しみも身体のどこかに眠っていてすぐに消えることは無いけれど、今はとても愛されているという確かな事で幸せに満ちてる。
『……やっぱ、悟は変なヤツ』
「変なヤツ、なんて失礼だなー…、僕は本気でオマエを愛してるんだぜ?」
そう笑った悟は私を引き寄せる肩を優しく撫で、視線は私でも意気消沈した女でもなく、呼び出した伏黒へと向けられていた。