第37章 繋ぐいのち、五条と春日の鎹
ムキになった女からすぐに斜め上を見て確認すると驚いた顔した悟が目をまんまるにしながら「フッた、間違いなく振った」と小刻みに頷きつつ、マジトーンで私に肯定する。それに私は確証を得て直ぐに目の前の女を向きフン、と鼻で笑ってやった。
そして片手で私自身の頭、側頭部とトントン、と指でこ突いて数歩先の女を嗤う。
『……だそうだよ。本人が言ってんだ、私はあんたよりも悟を信じるね。
まさかとは思うけど振られた事すら理解出来てねえの?脳みそが皺のない胎児の成長以下でつんつるてんでご理解出来てないんですの?お・嬢・様?』
制御出来ないほどの感情で顎がガクガクとして震える女。言い返そうとして、そしてただただ睨みつけてる。
『キーキー音出すんじゃねえよ、ヒステリックが。あんたの声が胎教に悪影響なんだけど。これ以上その金切り声で喚くならなあ~……、』
女から数メートル先、交差点を見て私は顎でしゃくって、恨みを込めて女を睨んだ。
『──手足もぎ取って肉達磨にした後、交差点に置き去りにすんぞ、バカメスが。
この人は私の大切な人…あんたみたいな過去に自分達の意思関係なく誰かに宛てがわれ、その関係を悟に拒絶された事を"なかった事"と思い込む女にこの人を渡すつもりはない』
──まだ瞳に対抗心が見えるな…、と女の様子を見て私は、少し口を開いてこの私達のやり取りを見ながら携帯を耳に当てたままの悟の胸ぐらを掴んで「屈んで」とこちらへと寄せた。
見えるように、いや見せつけるように。悟の唇に私の唇を重ね、ゆっくりと離しながら進行方向だった方向を見た。
『……あんたなんかに五条悟は絶対に渡さない。掠め取ろうとするなら次はぶっ殺すからな?』
完全に女が棒立ちし、僅かに怯えた視線に代わりつつある表情。対抗心が抜け、言葉を無くした人。
周囲の口を開けた見知らぬ人と視線が合った瞬間にその人は小さく「ヒィッ…」と叫んで私から逃げるように小走りで離れていった……失礼だな…。