第37章 繋ぐいのち、五条と春日の鎹
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「──…でさ、この辺に恵が任務しに来てるんだよね」
『へえ…、かつての複数人での任務も、今じゃソロなんだね』
「そうそう、実績もあるから等級も上がってね。やっぱ天才の僕の担当した生徒だもん、僕に似てみんな優秀なのさ!」
にこにこと楽しそうに悟は私の側に付き添い、都内の歩道をゆっくりと歩いている。今日は定期的に通っている産婦人科付近の店舗に買い物に来ている私と悟。
別に今週は病院に来る為に来たわけじゃないよ?産婦人科の建物内に入るのは来週。
いよいよ出産も近い周期になるという事で来週からは週イチで通いに来てね!と先生に言われているけれど、今回この街に来たのはただの買い物に悟の運転で来ていたのさ!
のんびりと歩きながら悟の腕に片腕を絡ませ、リュックみたいに重いからって自分の意思で簡単に取り外すことの出来ない重たい体で進む。ゆっくりとしたペースで悟が私に合わせてくれている中、歩道沿いにショーウインドウをちらちらと覗き込む。
この辺、婦人向けの店舗が多いなあ……あと子供用品。産婦人科が近くだからそういう層を狙った商戦なのかもしれないけれど。
悟は今、任務の合間に買い物に連れ出してくれてる。というか私の事を守るから側にいて、その間に近付いてきた呪いを彼が祓うから、という事で。
だから近付いてくるのが明らかに低級ではない、知能や力を着けている等級の高い呪いでも悟の側だからこそ私は安心が出来た。
呪術界の最強を名乗る人が側に居てくれる……これは首を横に振り頼れない、だとか守れないなどと五条悟という最強を否定する人なんてきっと居ないと思う。
笑窪を作り私をじっと見る悟はサングラスの奥の綺麗な瞳を細めた。
「……ああ、もちろんその優秀な生徒にはオマエも含まれてるよ!」
『ふふっ…評価ありがとー…ちなみに星は四くらい?』
特級の彼のついでに私も含めた褒め言葉だろうと思いながらも少し嬉しいな、なんて。
学生の時の課外授業だとか任務のように外に出て呪いを自ら祓いに行くことはなく、完全にサポートとなった今の私。
ん?と僅かに首を傾げた悟は自信アリげに私が触れていない手で、人差し指と親指の指先をクロスして見せ、ばちん!とウインクをする彼。指先で小さなハートを作って私に見せている。