第37章 繋ぐいのち、五条と春日の鎹
「──どうだったかな?記念日のフルコースは」
食事を済ませ、のんびりとした時間。テーブルクロス上で頬杖をつく悟がやけに自信満々な笑顔で私に聞いてくる。
……そりゃあここまでしてくれたんだもの。悪い評価なんて出来やしない。
『超絶最高でございました……こういう所はやっぱさ、堅苦しいなって思ったけど他のお客さんがいないおかげかな…、ちょっとリラックスは出来たかも』
「ははっ!それは良かった。以前のオマエならロボットダンスみたいなぎこちなさで食べていただろうねぇ……今日は確かに、僕が見ていても落ち着いて美味しそうに食べてたから、ここに連れてきて良かったよ」
温かいお茶でのんびりとお喋りをしつつ、悟はお茶のおかわりにボチャボチャと砂糖を入れてる。彼がこういう事を時々挟むから、正しいテーブルマナーとか今更か~…なんて、私自身妥協しちゃってるってのもあるんだけど。
「……そろそろ持ってきてくれる?」
『……?』
食後のゆっくりとした時間の後で悟が片手を挙げて笑うと、軽く頭を下げた男性スタッフがその場から下がり、次にこのフロアに現れた時には青と白のバラの花束を持ってくる。悟の側まで持ってくると悟は「ん、ありがと」と言って受け取る。
──光を受けるときらきらとする白銀の髪と、サングラスの奥の昼は空夜は星空を思わせる瞳をイメージしたみたいな綺麗な花束…。
悟が抱えているという事で幻想的な世界の美しさ、と思わせるかも…性格は綺麗じゃないけどさ?
花束を渡したスタッフが椅子の背もたれを引く補助をする中で悟は立ち上がり、私の側まで来て片膝をついて差し出す。両手でそれを受け取るとほのかに甘い香りが漂ってきた。
食事、エスコート、自身の容姿や現在している行為などやたらと自信満々の笑みでトドメとばかりにウインクした悟。
「僕からキミに」
『うわっ、ありがと……!』
カサ、とブーケを包むラッピングを鳴らしながらそれを私は受け取った。
結構こんもりと花が包まれた花束……青が吸い込まれそうなくらいに発色が良くとても綺麗で目立つけど白薔薇の方が比率が多く感じた。これ、全部で二十本くらいあるのかなぁ……。
真っ青な薔薇と純白の薔薇。キザだなあ、記念日にこんなものまで用意してたなんて、と嬉しさと恥ずかしさに薔薇をじっと見ていると「ねえ、」と声を掛ける悟。側で白いバラを指差している。