第37章 繋ぐいのち、五条と春日の鎹
世界一可愛い女の子の誕生日だとか、そういうネタじゃなさそうだな…。
きょっとーん。マジでなんの日だっけ、と即座に八月下旬の記念日一覧を携帯で調べる。視線で見上げたご機嫌な表情の彼はさておき、タプタプ、と記念日まとめを調べて目の前の表情が変わったひょっとこ口を見上げた。
「そこ、堂々とカンニング竹山ってんじゃない!」
びしっ、と指差し呆れた顔の悟。その彼に肩上ほど手を挙げて控えめな声量で質問に答えた。
多分悟の事だしこういうの狙ってるんでしょ。じゃなかったら他に思い当たるものがないもん。
『……ヤバイ夫婦の日でしょうか?』
「どうしてそうなったの?」
『いや、これ…』
携帯の画面を見せると画面を指先で操作してる悟。うんうん頷き、覗き込んでいた画面から顔を上げた。笑顔でブー!って私の答えを否定して。
「どんなクレイジー夫婦の記念日かと思ったじゃん。映画の宣伝の日だぞ、これ」
『あ、ほんとだ、映画の宣伝だった!……じゃあなんの日?どれの日?』
画面の一覧を見て悟は笑う。
「てか普通に夫婦の日とかあるのになんでヤバイ方を取るの……いや、僕夫婦の日を祝おうとしてる訳じゃないけどさ?」
『……答え合わせはよ』
への字口をした後に彼は私の手をそっと取る。
それは私の左手。現在は指の代わりにネックレスに通され、ここしばらく指輪の無い普通の薬指を指輪のあった場所を指先でする…となぞり、口元に色っぽい唇で弧を描く悟。
「去年の今日、指輪を嵌めた日。オマエが攫われた先で籍を入れられそうになったから僕が適当に婚姻届を提出しちゃったしね……、だからオマエも僕も共通の結婚記念日ってのが今日、指輪を嵌めた改めたプロポーズした日だよ。
……って…言わなかったっけ?」
私の指先を手に取りながら悟は首を傾げた。私も自身の記憶と向かい合う。プロポーズの言葉はあったけど。結婚記念日にしようとは聞いていなかった、ような……。
目の前で首を傾げた悟が反対側へと首を傾げ直した。
「もしかして初耳?五条悟の初耳学?」