第36章 私達だけの世界
多分、指をしゃぶっていたのを止め、その手のままだろう瞬間を写真に収めたんでしょうけど。モノクロの中でピッ!と小さく立てられたもの。腕の先端にある事と形状からグッドサインを出しているというなかなかにレアな一枚が撮れたんだよね!
悟は腰を落とし、私のお腹に触れて優しく撫でる。
「マジで元気なの!ぐるぐる動き回ってさ…、今は頭を上に向けてるんだけど……」
「ほー…?そういうのもあんた、見えるんだ?」
硝子が興味津々にお腹を見てる。悟は指先で私のお腹をとんとん、と叩いた。
「ん、きたきた…そろそろ動くよ、」
彼がそう言うとすぐにもぞもぞと動く気配。あっ、蹴ってる、蹴ってる…!
……彼にはお腹の子がどのように見えているのやら。以前聞いたのは呪力回路や私とは違う術式回路で形として見ている、という事。だからって動く前の動作が普通分かるモンなの……?
驚いて瞬きながら悟を向いた。
『よく分かるねー……預言者か?』
「そこは最強の五条悟なんで。あたり前田のクラッカー」
そのネタ、好きだよなあ…、と指をパチンを鳴らすドヤ顔を悟を鼻でふすん、と笑ってやり…。
硝子より手帳を渡され、それをそのまま悟に渡すとバッグにしまってくれている。その流れで硝子は私のお腹にそっと触れ、一度撫でた。
「人によってはハルカくらいの状態で胎児の体勢が分かるらしいよ。頭が下であれば安心だね……、全く、人を心配させる所は誰に似たのやら」
硝子が言ったタイミングで顔を合わせた私と悟。
互いに無言でこの人、と指を指し合って、硝子には苦笑いをされてしまった。