第36章 私達だけの世界
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近くまで行くっていう、補助監督生の車から降りて僕は薄暗くなって街灯も着き始める歩道を早足で急ぐ。目的地まで少し歩かないといけないみたいね…。
わー、遅刻だ遅刻!なんでこういう時に残業があるのかなあ~?僕の遅刻ってそうなかなか無いよ?レア枠ってかタイムテーブル真っ最中!
珍しー!って皆、驚いちゃうのかな?それとも驚く前にこの僕を労ってくれるのかも?
例えばさ?
傑には「今度同じような残業があったら私に言ってくれ、悟一人に任せられないだろ?……私達は最強の親友じゃないか」って言われて、硝子には「いつも激務に振り回されて大変だな。たまにで良い、疲れたら医務室で休んでけ。甘い物でも用意しておいてやる」って同期に慰められてさ!
そんで後輩である七海には「やはり残業はクソです……が、流石は五条さんです。私も見直しました、あなたこそ私の尊敬する呪術師でしょう」、そしてそして最愛の妻である僕のハルカに『いつもお疲れサマンサ!なんてね。お疲れのダーリンには特別待遇しちゃうからね~?みんなが居るから恥ずかしいけど……ほら、お疲れさま、のちゅう…ここでする?』なーんて言われちゃったり!
……うん、今日の僕は最高に頑張った、伊地知に半分くらい投げてたような気もしたけど気の所為だしお集まりの皆々様に僕へのご褒美期待しときましょ!
急ぎ足は変わらず、街灯照らす歩道をすれ違う人を縫って、僕はひたすら進む。
こんな時間だから日中の人集りは大幅に減り、若い層が多かった日中の人間も夜になれば仕事帰りの会社員といった客層に変わっていて。すれ違いざまに煙草やアルコールの臭いを漂わせてる人達。
声も態度も大きく、大体の酔った人間は楽しそうで、家に帰ろうとする疲れた人達には低級の呪いが影から視線を向けていた。
僕も仕事疲れのリーマン的ポジションだけどさ、これから向かう先で楽しげな酔っぱらいのオジサン的勝ち組になるのさ!いや、僕はお酒飲まないけどねー?
ポケットに両手を突っ込んで少し速度を上げて向かう。しょっちゅう会ってるけど、ストレスの溜まる仕事の残業の後だもん。
早く皆に会いたいなあ…。
「皆待ってるかなあ~…?ハルカ、僕の目を盗んでお酒を飲むのは流石にないとは思うけどさあ……、」