第36章 私達だけの世界
寮、マンション共に部屋の光景を思い出し、悟がロンパースだとかきぐるみみたいな服だとか買い込み始め、まだ早い!と増え始めるグッズにストップをかけている所だけれど。
彼も嬉しいんでしょ。どんなに産後すぐに使わないものを買うなと言ってもやっぱりお土産が止まらない。三年くらいタンスで寝かせる事になろうとも、だ。いや、三歳、四歳の服は早すぎんだろ……。
『子供が着飾るものばっか悟が買ってくるんですよ、買うなっつってんのにまーた翌日に買ってきて!頼んでた食材を買わずに西松屋行ってんですもん、あの人頭ン中お花畑なんです??』
だん、と小さく机を叩くと七海は小さく「今更ですか…」とツッコミが入った。
…うん、お花畑なのは昔からなんでしょ。
硝子は脳裏に悟の事を想像したらしい、楽しそうに笑っていた。
「はは…っ!五条らしい抜け方だな。ハルカ、あいつから財布取り上げちまいな、金があるから買ってくるんだ」
『現生魔法のカード無くともスマホ決済あるじゃないですか~!かといって携帯を取り上げたら連絡手段なくなるし』
「服はいくら小さくても嵩張るだろうし、小さい子供なら成長も早いからすぐに着れなくなるだろうな……、悟もまあ、子供が生まれるの、嬉しいんだろ」
わいわいとここに居ない人の話をしつつお通しを摘み始める中で、七海は訝しげな顔をしてグラスを持っている。
「……五条さん、服ばかり買ってきてるんですか?道理でこの前、バースデイから出てきたワケだ」
『…チッ、あンのやろ……。
はい、見事服しか揃えてません。オムツだとかそういうものは買わないですね~…七海さんにその場に居たなら止めてと言いたい所ですが、すでに買った後じゃ止められないですね!』
「そりゃ大変だ(一度じゃなく二度見てるということは黙っておきましょう…)」
私の姉さんも言ってた、成長していくから着られるのはあっという間らしいよ~、と。
育児の先輩である兄嫁の彼女は今も生まれた子供に振り回されている。夜泣きが凄いだとか、うちの兄貴がうろたえてなかなか動いてくれないだとか。うろたえる姿を見て踊ってる暇あったら手伝え!とキレたら何をすれば良いか分からないです…と別に踊ってるわけではなかった、という話は聞いてて面白かったけど。
それらを聞いたらまだその段階に至っていない私も不安にもなってくるなあ……。