第36章 私達だけの世界
「えー?良いじゃない、減るものじゃないでしょ…ケチね」
『それ、目に毒、きっと毒、例えば写真版グラブジャムン(※)その糖分、呪いがかってる』
「あーはいはい、そこの淫行教師とイチャついてる写真って事ね。ったく、どんだけイチャついてんのよ、逆に気になるわ……」
(※世界一甘いと言われるインドの缶詰。ボール状のドーナツのシロップ漬け)
ジャ、と紙袋に戻した写真達。真顔になった野薔薇は隣の伏黒に回して「回せ」と伝えて渡してた……
って持ち主に返さないんかい!
『野薔薇っさァーん??』
「…ふっ、俄然興味がある、集中力切れたし勉強も丁度飽きたし…息抜きもしたかったし。この釘崎野薔薇様が遊んであげましょうってね!」
両手を机につき、そのまま椅子からやや仰け反って野薔薇の隣の伏黒を見ると、彼と目が合った瞬間に向かい側に座る虎杖にその封筒はサァ、と机の上を滑って渡された後。バーテンか?あちらのお客様(野薔薇)からです、か??それ私のなんですけど?
あ?もしかしてこれ、三人でぐるぐる回してくつもりかな?野薔薇の背越しに伏黒を見るのから、そのまま斜め前方に座る虎杖を見ればにたにたする虎杖。こちらを気にしながら写真の詰まった紙袋に手を突っ込んでる。
『虎杖、それ見たらタンスの角に足の小指ね』
「なんで俺だけ!?」
『野薔薇は未遂、伏黒は虎杖に回しただけ、現在進行系で見るな、というモノを見ようとしてるのはどなた?…ああん?』
タンスの角にぶつける痛みを味わいたくなければさあ、返却を。顎で封筒をしゃくり、クイクイと指先で招けばそっとこちらに渡そうとするも隣の野薔薇氏の「チッ!」という大きな舌打ちに、ビビる虎杖が紙袋を大事そうに抱え込む。
「ちょっと俺、どっちの言い分聞けばいいん!?」
『「こっち!」』
丁度隣の野薔薇と言葉が被って「だからどっち!?」と私の写真抱えたままの虎杖を見ていれば、三年生達がこちらと同じく何やら騒がしい。
なんだろ、と虎杖と視線を合わせた後、その騒がしい方を見れば、悟がテーブルに一枚一枚並べていて、「見る公害じゃねえか」というパンダからの辛口コメントが飛び出た瞬間だった。
試験前の生徒に配慮して静かになんてしてられっか!と膝裏で椅子を突き飛ばしガガッ!と大きな音を立てて立ち上がった私。
『ばっか!あんた何広げてんの!?』