第36章 私達だけの世界
談話室を出ようとして回れ右して真後ろに居たのは悟じゃなく、真希にぶつかりそう!という所で私の両肩は真希によりがっちりと掴まれてしまった。
『ピャ!』
「オイ、ハルカじゃねえか?悟と談話室に来るとか珍しいな?」
悟は半歩真希の隣でにたにたとサングラスの下の鼻と口を片手の甲で隠してる「ピャ!ってなによピャ!って」小さくツッコミながら小刻みに震え笑ってた。
ンなものだから真後ろにはふたりが逃げ道を塞いでる。肩も掴まれてますし?
『逃げ場がねえ!』
「……あん?なんで逃げる必要があんだよ?別にそんな必要ないだろ…?
談話室に用事があんだろ、ほら突っ立ってねえで早く入れよ」
掴まれた肩をぐるん、と回され、サンダルじゃグリップが効かず(そもそも真希は怪力な所もある…)キュキュッ、と片足の踵を支点に談話室へと向けられた体。
そのまま室内へと押され、私は紙袋をぎゅっと大事に抱えて。
何人かがこっちを見ている中で空いた席がいくつか見られる。そりゃあ生徒数が少なくスカスカなんだ、空き部屋は多いんだけど管理の関係上特定の部屋を使うしか無い。
だから高専はハリボテの空間ばかりの部屋が多いんだけど、いっそのこと談話室じゃなくてそういうガランと広い部屋で床に広げるのも良かったのでは…?そういう案を思いついても既に後の祭りよ。
「まあ、座っとけ」と真希に右肩を、左腕を悟に掴まれ押されてまるで囚われた宇宙人のように談話室へと連れていかれた私。
野薔薇の隣で開放されて、悟は少し離れた席を指しながら「僕はあっちで」と離れていってしまった。
立ったままこの部屋の全体を眺める。
なにやらフンフンとご機嫌にハミングする空気読めずの悟が今ガガガ、と椅子を引き着席したのは除外しといて。
音を立てないようにとそっと椅子を引き、座って隣のテキストを開いている真剣な野薔薇の横顔を見て確信する。思わず目元に私は手を当てた。
『っはー…テスト期間目前かー……っ!』
「ん?珍しく談話室に来ちゃって一体どうしたのよ……?」