第36章 私達だけの世界
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──新婚旅行から帰ってきて数日
日用品の買い物を悟と一緒に行って、結婚式から五日間の最終日に写真の印刷を注文して、取りに行けていなかった私と悟の写真を回収した今日。お互いに分厚い写真の入った紙袋を受け取り、『寮に帰ったら確認ね!』と互いに自信たっぷりの顔を見せ合い、すぐには中身を確認しないで約束をした。
明日は一日だけ高専での仕事が入っていて、明後日から私は三日ほど予定はない。
マンションの方で過ごしてと悟に言われているけれどさ……。今日、写真を確認するなら携帯のデータとしてじゃなくて、お互いに実際の現像した写真を見て決めるんだー。ベストショットを見つけるのにお互いに見えず、それでかつ広く場所を取りたいのだけれど。
夕ご飯を作りながらそれを相談したら、「なら、談話室使えば良いんじゃね?」と指を鳴らして即答されてしまった。そうだ、たまにしか利用しないけど談話室もあったか。
そういう手もあったか、と悟を見上げて『天才か?』と首を傾げれば謙虚さの無い彼は「天才ですが?」と首を傾げて返事をしていた……。
謙虚って知ってる?知らなさそうな無邪気な顔で美味しそうにカレー食べおって。
互いに部屋着のままで写真の入った紙袋を片手に忘れずに持つと、サンダルでぺたぺたと談話室にと向かっている。
流石に甘ったるい写真をしこたま詰め込んだ写真だもの。談話室って毎日利用者が居るワケじゃないけどさあ……、今日は誰も居ませんように、と願いつつ隣でふんふん鼻歌を奏でてる悟が先に手を伸ばして談話室をドアを開けた。
既に明るい部屋。誰か居たか……、その空間に片手を向けて譲る彼。
「さあさ、お先どうぞ」
『さんきゅー、それじゃお先に…』
……まあ、居ても虎杖と野薔薇とかくらいっしょ。
そんな甘い考えは春から新しく入った一年生、そして馴染みのあるクラスメイト達の二年生、三年生(真希は居ない)の一斉に向けられた視線で現実を思い知らされた。変な所でアンラッキーを引いてしまった。トラブルって程じゃないけど私のそういう所案件だ、コレ。
悟が後ろから付いてこようとした所で私は踵を返す。回れ右だ回れ右!
『失礼、しましたー』