第36章 私達だけの世界
路肩に停車した車の側で、ガコン、と自動販売機から商品が落ちる音。
しゃがんで取り出し口から飲み物を取る私の隣で、悟も今回のレジャーで使うものを自販機で買って、屈んでは取り出し口から長方形のパッケージを片手にしていた。私が買ったものは人間用だけど彼が買ってるのは人が口にするものじゃない。
「とりあえずおじさんに勧められたの買ってみたよ!」
ニッ!と笑顔を見せ片手のピンクの小エビがいっぱい詰まった四角いパッケージを見せて、また自販機に体を向けて彼の指が迷ってる。
その彼が向かっている自販機の取り扱い商品は釣り餌。昨日の餌とは違うもの。っていうかさあ……。
『なんで昨日釣りしたのに今日も釣りなん?あんたは浜ちゃんか?そして私はスーさんか?釣りバカ日誌新婚旅行編って感じか、これ?』
釣具やさんの隣に横付けしたレンタカー。荷物を色々乗せた後部座席のドアを開け、悟は釣り餌の詰まったパックを4つ、私は飲み物をクーラーボックスに突っ込んでしまい、ドアをバタン、と締める。
彼は腰に手を当てふん、と鼻で自慢気に笑っていた。片手でサングラスを少し下げ、太陽光をサングラスが反射し、コナン君みたいになってる。キリッとした顔でこちらを覗きながら声を大きくしてさ。
「単純に言ってしまえば昨日楽しかったから!川釣りの次は海釣りじゃね?……ってね!」
『えー…?もしも釣れたらどうすんの?お魚は私捌けないんですけど』
そもそも釣りは昔、家族で少しだけしたけれど。悟も昨日の様子を見るに慣れていないようで、あまり釣りをする機会があったわけじゃないみたいだし。
そりゃそうか、忙しい身で任務の合間に息抜きをすると言っていた悟。釣りにはたくさんの時間が必要なんだからやってる暇がない……ってか、三分としないうちに飽きた!と諦めそうなタイプだし。