第36章 私達だけの世界
互いに絡めた指が悟からするりと抜かれ、私が見上げた彼はこちらを向き微笑んで。
悟は繋いでた私の手を掴んで彼の腕へと持ってこさせ、私に悟の腕を絡ませる。
「夢みたいかもしれないけれどこれは夢じゃないさ……ほら、あったかいでしょ。こうしていれば現実だって分かるかな?」
手を繋ぐのが恋人であれば、その先の関係は夫婦だと違いが触れる方法が進化していく。
どきどきしながら悟と腕を組むようにしがみつけば布越しに指よりも感じる彼の体温。夢じゃないんだ、としみじみ胸の奥から嬉しくなってゆっくりと歩を進めながら、私の鼻先にぴと、と付けられた彼の指先。
……と、すぐにやってくる鼻孔への悲報。
「あと、洗ってもなかなか落ちない餌の臭い、これなら夢なんて見る余裕すら与えてくれない」
『くっさ!鼻に近付けんなっ!』
「はははっ!千年の恋も冷めるくらいの悪臭だよね~!超強烈!」
顔を仰け反らせ、こっちも同じくまだ臭いが取れないんだわ、と笑顔の悟に仕返しをする。
……おかしいな、新婚旅行ってなんだっけ。甘い空気を子供みたいな空気にして、ゲラゲラとひとしきり笑って。
たくさんぎゃあぎゃあ騒いだ後にもう一度腕を組んで寄り添いながらのんびりと散歩をして、順番が回ってくる余った時間以上に私達は園内を回った。