第36章 私達だけの世界
「以前のように抱き潰す勢いでヤりまくりたい!けど、抱き上げて駅弁でガンガン突きまくる激しいのが出来ないし、ねちっこくポルチオ攻めなんて静かに生まれる時を待つ息子にとって迷惑だろ。
マンションの薄い壁、隣で矢沢永吉のライブ気分で盛り上がってみろ、ドキドキしない壁ドンからの苦情、更には大家さんに言いつけられちゃうだろ?
ヤりたいからって自家発電も割と飽きてるし、浮気したくない。右手も左手もTENGAもマンネリ、風俗も嫌だ。でも、ムラムラするこの溜まり続ける性欲はどうしようもない……やっぱり僕には妻が居てこそだって思い知らされた日々を過ごしてるんだぁ……」
……演説かなあ、これ。私は何を聞かされているんだ?と正座を崩し、ぽりぽりと腰辺りを掻きながら楽な姿勢で悟の熱弁を聞く。とにかくヤりたい熱意は伝わっているけどえっちする前に彼は何が言いたいのよ?
「この僕のカッチカチの勃起力を抑えるに、一晩に何発も射精する必要があると見た!」
キメ顔でそう言い切られてもこっちは困惑さ。
『なんかサイテーな政治家の演説みたいだねー』
「性慈家(せいじか)の演説、最後までご清聴して?
で、だ!このままいつものように愛撫して、背後からとか前からの浅いえっちするのも良いけれど!溜め込んだ悟君の残機…、発射回数をどうこなすかって話だよ!」
……夜だし声を抑えろよ?とこれ以上ボリュームが上がらないようにと目を光らせつつ、口元に人差し指を当てて見せながら頷いた。やだよ?フロントから電話掛かってきて注意食らったりするの。
悟はきりっ、といつになくかっこいい顔をキメてる。口に出す言葉は最低だけど。
「ハルカに口でしてもらって、太ももとか手で何回も出させて貰ってから本番にイク。どう?キミのアソコは僕を我慢出来そ?」
『我慢出来ないの悟じゃん』
そうでした、と舌を出してウインクした悟は浴衣をさっさと脱ぎ捨てる。一枚脱げば下半身を隠すものだけ。それも斜め上を向き脱ぎ難そうに突っ張っている。自動選択ツールでそこを引き伸ばしました?という異様さ。
その布地を取っ払おうとパンツに親指を掛けた悟は呼吸を少し荒げていた。