第36章 私達だけの世界
349.激裏
旅館での豪華なご飯を頂き、お風呂は部屋についたもので済ませて……。
男女に分かれた大浴場ももちろんあったんだけれど、「ぼかあ一時も離れたくないの!」と以前泊まった旅館よりは少し小さく、けれども部屋にある内湯と石灯籠や小川など庭に手を入れてある、露天風呂のよくばりセット付きの大きな部屋で彼との多くの時間を過ごしてる。
もしもここに一ヶ月滞在する事になっても、のんびり休みたい人だったら飽きないんじゃないかな?
温泉はしょうがないよ、大浴場はバラバラになるから行かないとして。でも離れたくないからって理由で流石にトイレは入れさせません。
部屋のトイレに入るとノックをしにやってくる人。落ち着かんわっ!と、外でノックをしまくる悟には私も声を大きく張り上げて怒りましたけれど。
やり返そうと彼がトイレに入った時に頃合いを見てドアを叩きまくっても静かで、しばらくしてから出てきた後に「ノックは止めなよ、落ち着かないじゃん」ってマジレスには『オマエが言うなや…』と静かに突っ込みを入れてしまった。
さて、眠る為の支度を終わらせ、布団の敷かれた部屋の夜の時間。悟からの誘いのあった時が迫ってくる。夜が深くなっていく程にそわそわしていた悟。浴衣を着た彼は布団の前にして仁王立ちしていた。
ごくり、と固唾を呑んで立ったまま彼を見上げる。ふんふんと鼻を鳴らしてにこ、と笑っていた。
「じゃ、えっちしようと思うんですが!」
『が!』
思わず布団の上に正座して立ったままの彼を見上げる私。見下す、というには慈しむ優しい瞳、青い瞳が私と視線を合わせてうんうんと頷いていた。
「流石にねー、お腹の大きなオマエに無理はさせたくないの。でもね、こういうずーっと一緒に居られる機会って滅多にないじゃん?するとですねー、ずっと悶々しちゃうワケですよ、ヤりてえヤりてえって!赤ちゃんデキてんのにね?
人間の身体ってバグってんのかねー?それとも下半身に脳が出来た僕だけ異次元な人間なのかな?」
『創造主でもない私に聞かれてもどうしようもないんですけど……』
はあ、と仁王立ちした悟が肩を落とす。そしてキッ!と目付きを鋭く真面目な顔付きになった。
なんだ、そんな真剣な顔なかなか見ないぞ?一体何が始まるというんです?
ぐっ、と拳を握り、その拳を震わせながら抑える悟。ほら、政治家と吉幾三がやりガチのアレだわ。