第36章 私達だけの世界
「僕を誰だと思ってるの?」
『……発情期のうさぎ?』
「そこまで交尾の事考えてねーよ、今はえっちしたいなって思うけどさ…?」
ククッ、と笑った後に片腕が引っ込み、僅かな間を空けて私の見える位置にその手が見えるように持ってきてる。領域展開をする時の印の型、無量空処を見せてくれたあの手を思い出したけれどその人差し指と中指に挟まってるのはコンドーム。
「──性欲開放、無限ピストン」
『こら』
「実は僕、このように予備を持ってました。
セックスする時、コンドーム着けてますか?略してセコム着けてますか、だよ?」
『本物のセコムの警報機を鳴らすぞ~?』
やけにいい声で言ってるしさあ…。
彼は声を出して笑いながら見せつけたゴムを引っ込め、おそらくは入っていたポケットに戻すと再び腕を回してぎゅうっと抱きしめて。甘えん坊な犬のようにはしゃぎながら懐き過ぎた猫みたいに頬擦りを繰り返した。
「ちゃんと持ってきてるだろ?デキる男はこういう用意も完璧なんだぜ~?」
『ん…、じゃあ、寝る時にちょっとだけしようね』
明日が早いだとか特に気にせずに、夜は焦ること無く楽しめるかも。
逃がすことのない腕に触れ、手の甲へと指を這わせてゴツゴツとした指を確かめる。私達を繋ぐ呪物となっていく指輪に触れて、心のどこかでこの人は私のものなんだ、と満足しながら。
本日の夜にえっちが出来る、とひとつのタスクを作り、それを楽しみにする彼ははしゃいでる。あぐらをかく脚のどこかが腰に当たってるのか、さっきからこんこんと突かれてる気がしますがこれは多分、悟の悟君なんでしょう。
「うんっ!すっげー楽しみ!……って、既にご起立してる悟君が申しておりますので本体の僕が代弁しときますね」
『勃つのホント早えなあ……』
完全とは言えないけれど腰に当たるなにかの正体がこれではっきりとした。
したくてたまらないのか、私を抱きしめ逃さない状態でカクカクと小刻みに腰を振って服の中で当てて感じてる悟に『夜まで待てない?』と髪をいじりながら聞くと「今はオマエの腰で抜いておくよ」と少し荒い呼吸で色っぽく耳元で彼は囁いていた。