第36章 私達だけの世界
348.微裏
目的の駅に到着して、駅のロータリーまで行けば、旅館からの送迎車を見付けてさ。荷物を積み、悟と私も乗り込んで。そのままワゴン車は旅館へ出発して目的の宿に着いて……。
フロントでチェックインした私達は案内された大きな部屋で数日分の荷物をのんびりと整理をした。
薄手の上着をハンガーに掛けたり、数日分の着回し用の服をしまいこみ、服を脱いた分スカスカになったケースを壁際に置いて…。
これで部屋に上がってやるべきことはした。
旅先での到着時のやることを終えた彼はいそいそと座布団に向かい、すとん!と座った悟。サングラスを座卓に少し乱暴に置いて膝をパンパン叩き「チッチッチッチッ…」と舌を鳴らしてる。
……おやぁ?もしかして私を猫かなんかと勘違いしてらっしゃる?
「ちくわ持ってないけどね……アッ、肉のちくわってかロング・シャウエッセンの極太タイプなら股間に生えてるけどっ!ハッハァ↑↑」
『パリッと折るぞ?下ネタどまんなかの人に近寄りたくないかもー』
「おいで~♪今日もハルカ~♪僕の~膝へ~♪」
『おやおや~?勘違いかな、スターリン君。私はキミのアライグマじゃないんですが??』
お部屋のご機嫌な彼は最低な下ネタとアライグマのエンディングテーマを披露しつつ。
カスタネット芸をするように膝を叩いてこのままだと一曲、それも私の名前を入れて歌いながら最後まで部屋を盛り上げてしまう。
私、この流れで歌われたウェントワースの森出身じゃねえけどな??
悟は歌が上手だからカラオケなどで本気で恋を歌うものであれば聞き惚れ、じっくり彼の歌声を聴き入りたい所だけど、こうしてふざけて膝上に呼び込む為にイイ声色で歌ってる。
酔っぱらいか?という彼を放置してどんな反応をするのか観察しても良いけれど構ってあげなきゃどうせ部屋の隅に移動して三角座りしちゃうでしょ。
『……しょうがねえな…、』
はあ、と座布団に座る悟の元に近付けば膝をリズミカルに叩き歌うのを止めて、笑顔で両手を広げ歓迎してる。
「ハァイ!ラスカル!今日こそオマエを狙うスラミーの中身をぶち撒けてやろうぜ!キミは僕のモノって見せつけてやらないとな!」
『不穏なラスカルにするんじゃねえよ?あれか、私はアライグマ型の爆発物か?
悟が呼び込み君の様にずっと呼んでるんだもん、来なきゃずっと歌い続けるか部屋の隅で腐るじゃん』