第35章 縛りの儀
ホームに着いた新幹線。
風を受け、流れ、乱れる髪を手ぐしで整えながらゆっくりと新幹線が定位置に停まるのを見届ける。
これからのふたりだけの旅。わくわくしながら乗り込める瞬間をふたりして遠足に浮かれる子供みたいに左右に身体を揺らしながら待ってる……いや、私の意思っていうか、肩を抱く彼に私ごと揺らされてるんだけど。
開いたグリーン車のドアに「開いたヨー!」と興奮する悟の声。私の背をそっと支える手がゆっくりと前へと押してくれる。悟は「さあ、乗って?」と私を先に送りお礼を伝えながら彼に甘えて、私は先に乗り込んだ。
ゆっくりと通路を進みながら、私達の座る席を見つけて上に載る荷物を突っ込み、載らないものは通路に邪魔にならないようにと座席側にストッパーを掛けて置いて。
……やっぱ、旅館まで待つのもそわそわしちゃう。超、気になるんですけどーっ!
『……ねえ、やっぱりさ?何連休なのか、知りたいな~?』
「会いた~いな♪」
『知りたいなー!』
「切な~いな♪」
『ちょっとそこ、オープニングやめて?』
「だって~♪だって~♪」
『オイ』
すん…と、眉の下がる悟。猫背になり、サングラスに隠れきれていない瞳が上目遣いをしてる。私の服をつんつん、と引っ張りまたいつものように子供のような口の尖らせ方をして。
「だって、オマエに構って欲しいんだもんっ」
『もん、てね~……』
悟の甘い声で、もん、とか言われてさ。周りからかなりねちょねちょしたカップルだと見られるパティーンっすよ。ペアルックとか普段から外行きの服でしてなくて良かった。部屋着では色違いの服とかペアルック、してるけどさ?
「せっかくの完全に任務抜きの新婚旅行だよ?学長とか伊地知には世界が終わるレベルにヤバイ以外での電話してこないでって口がシゲキックス食った時以上に酸っぱくなるくらいに何度も繰り返し伝えて約束させてからの新婚旅行!
僕の大好きな奥さんとはちみつみたいなとろける日々を過ごしたいじゃん。それはもう、こうやってる移動時間も含まれてるんだよ?これはコース料理の食前酒みたいなものさ!僕飲まないけどっ!」