第5章 "好き"が止まらない!
「ねえ……僕がキミをあの場から連れ出さなかったらどうなってたか…教えてあげようか?」
『……何?』
悟は自身の太ももに肘をつき、頬杖をしながら私を指差した。
顔は笑っている。その笑う表情というのは優しいとか悪戯っぽいだとかじゃなくて、少し猟奇的な…ハイになったような笑み。
公園の街灯がそんな悟を照らしていて、少しだけ恐ろしく思わせた。
「あの場から連れ出さなかったら。
ホテルとかに連れ込まれて朝までレイプ三昧だ、それも全てキミが薬でのんきにぐーすか寝ている間に行われる。
僕がここにキミを連れて来なきゃあの目の前に座ってた男にヤられてたんじゃない?」
『は……はあ?』
とんでもない発言にちゃんとした言葉が出ない。
悟はいつもと違うサングラスを取り、それをしまう。裸眼の状態で少し笑いながら。
「キミ、席離れてたろ?トイレにかな?あの友人ちゃんと一緒にさ。その間にお酒と水が来てさ…睡眠薬みたいの入れてたのを見たんだよねー!キミってつくづく警戒心無さすぎ。いい加減学びなよ、龍太郎の件といいさ!」
『え、見てない時にそんな事が…、』
そうだったんだ…。悟がいつから見てただなんて今は聞けないけれど…。
だから私がウーロンハイ飲もうとしたの…止められてあの男に意趣返しを…、そして水も悟の呪術で弾き飛ばしたんだ。
もし悟が来なくて、止められなかったら私は……──。
ぎゅっと自身の体を腕で抱きしめて、ショートブーツの先端を見た。
──またも悟が助けてくれた。
助けてくれなかったらきっとこの時間には朦朧として、あの男に持ち帰られて……夜中か翌日に目が覚めた時には…。
助けられたのはありがたいけれど、悟はどうしてそこまで私を気にするんだろう。特別な関係じゃないのに…。その事について私は知りたくなってしまった。靴の先端を見つめたままに。
……少し酔って気持ちが大きくなっているからかも。
『その、止めてくれてありがと。
でも…っ!なんでわざわざ来てるわけ!?お店の外からじゃ見えない席だしそもそも場所教えてないし。それに…表面上もなにももう、付き合って無いじゃん』
悟が見れない。感謝はしてるけれど…。