第5章 "好き"が止まらない!
パリン!という耳が痛くなるような高音と周囲にぶちまけられる水。口を着けることが無かったので満水のグラスだった。
そのガラス片や水を…スタッフが急いでやって来て片付け始める。申し訳ない気分で頬杖なんてしてられない。悟はエアーグラス状態からゆっくりテーブルに手を降ろす私を見てははは!と笑った。
「ハルカ、"キミ相当酔ってる"んだねー!心配だから僕が部屋まで送り届けるよ!
……じゃあね、皆はこのまま楽しみなよ!」
片腕を掴まれて立ち上がらされた。ちょっといつもよりも力が強い。というか痛い。
『あっちょっと…悟っ、』
「ほらほら~アンヨが上手、アンヨが上手」
『あーもうっ!私酔ってないんだけれど…っ!』
引っ張られて、バーの外へ。友人と言葉を交わす時間なんて与えられる事もなく…。
悟はバーの外に出ても私を離さない。歩幅も身長分大きいのもあって引っ張られて痛い。ただ黙ったままに悟の靴と私のブーツの音だけがずっと絶え間なく聴こえる。
ぐいぐいと進みたくなくても強制的に進められてく私の足。
『痛い。腕、ねえ……引っ張られて痛いんですけれど?』
「キミさぁ…あと数分黙っててくれない?」
いつもと違う悟。少しだけ怒ってるように感じる。
私は小さく"分かった"と返事をして、連れられるままに黙った。
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連れてこられたのは夜の公園だ。
きっと昼間は賑わって居たんだろう。設置されたゴミ箱にはコンビニの袋が結んで捨てられていたり、空き缶がたくさん捨てられている。
けれどもこんな時間にいる人間の利用者なんて居なくて。人間は私と悟だけで。
他にいたとしても人が集まり、あらゆる感情の残る場所。呪いがこちらにふらふらとやって来る様子。
それを見た悟は心底嫌そうな顔を呪いに向けていた。
「うん……大事なお話の前にお邪魔虫が居るね?ちょっと邪魔されたくないから祓っておくよ」
公園には3体の呪い。真っ直ぐにこちらに向かって来ている、いや…向かって来ていた。
悟は祓うと言った瞬間には呪いを祓い去っていた。その衝撃波というか、風が頬を掠めていく。私の纏めきれずに解れた細かい髪がその風に靡く。
そして私を掴む腕もようやく離され、悟が座るベンチの隣に私は一人分離れて座る。
……なのに悟はその離れた分を詰めて、私にくっつくように座った。