第35章 縛りの儀
『ひょわっ…!?ああ、ばっかコノ!』
もぞ、と布越しに動いてる悟。左脚太ももで唇が這い、そして髪や吐息、睫毛でくすぐったくって…そして何よりも恥ずかしくて。これ、速攻止めて欲しい、と身じろぐ中、獲物を捕らえた彼の唇。ずる…っ、とガーターベルトが膝へとズレていく。
上半身をスカート内から引き抜きながら、つま先までズルンと抜き取った、細かいレースにリボンの装飾のあるガーターベルト。
ふんす、と悟はドヤ顔をして弧を描くその口にぷらんとぶら下げてる。
……犬か、あんたは犬かっ!
そして立ち上がる彼。手に抜き取った繊細な作りのガーターベルトを握り締め、天高くその拳を突き上げる。
「よーし!獲ったどー!さあて、次の花婿…だあれ~?」
ぶんっ、と投げる悟に女性陣のようにがっつきにいくわけじゃないけれどわいわいと盛り上がってる階段下の招待客の皆(男性陣)。
またも高みの見物をする悟。
椅子から立ち上がった私はさっきの攻防で横向きに転がってしまった左足用の靴を履いて、その光を受けてキラキラと生地が煌めくタキシードをど突いた。
やけに楽しそうな表情でこちらを覗き込む悟に文句を言う気力が削がれる……汚れてるのに純粋な少年みたいにキラッキラな瞳で見て来てさぁ…。
「ん、なにかな?」
『いくらサプライズといっても。さっきのはすっごい恥ずかしかったんだけどっ!』
ははっ!と歯を見せ良い笑顔を見せた悟は瞳を細めた。風に揺れる頭上の木々の影、本当に楽しんで、幸せそうで。
「……でも、すっげえ盛り上がったろ?」
『盛り上がってもこっちはただただ恥ずかしかったんですが?』
クックックッ、と笑いながら悟は階段下へと顔を向ける。
歌姫に続き拳を突き上げる(えっこういうのってラオウ式の報告なの??)東堂を見て、「あれぞ真のラオウだねえ…」とまた人によっては怒りを買う発言をしてる。いや、東堂は怒らなそうだなあ…。
互いに階段下を眺める中でこちらを見ずに悟は私だけに聴こえるように続けた。
「……オマエの右側に残ってるガーターベルト。あるでしょ?」
……あン?まだやんのか?あの変態プレイを?
ささっ、とドレスを抑える私に「もうしないよ!」と声に笑みを入れてるツッコミ。やらないのなら良し、とドレスを押さえるのを止めて悟を見上げた。