第35章 縛りの儀
階段下でばちん、とウインクをして掲げたブーケを揺らす歌姫に、階段上から私は叫んだ。女性陣も男性陣も賑やかだからね!
『ナイス、ファイトです!是非とも運気活用してくださーい!』
「んな事言っても歌姫はユリアにはなれないっしょ」
「アンタに言ってねえわよ、ハルカに言ったの!私は北斗の拳縛りしてるわけじゃないんだけどっ!?」
への字口になった悟は「おーこわ、あんなヒスじゃ嫁の貰い手とか一生無理だわ~…」と呟いたのだけれど。聴こえたらしい階段下のラオウ、じゃなかった!
……歌姫が「聴こえてんだよ五条!」と悟の言葉を拾い、中指を立てて怒っていた。
さて。切り替えの早い悟。パンパン、と手を叩き、階段下のブーイングが少し収まった男性諸君にまたも大きな声で叫ぶ。
「さて、こっからは世紀末、じゃなかった女の子達へのサービスは終わりとして」
『あんた、全員を敵に回したら黒ひげ危機一発されるよ?』
「……それは最強には通用しないから良いもーん。
ほら、本題!ここからは非モテ男性諸君へのサービスタイムだよっ!お待ちかねの僕の奥さん…、ハルカにも秘密にしてたサプライズの時間です」
サプライズ…?
少し前、式が始まる前に勘違いした件とは違う状況。椅子に座ってどうすんの?と階段下を向いていた悟がこっちを向き、椅子の近くに片膝を付いてしゃがんだ。椅子でなにすんだ、椅子ダンスは出来ねえぞ?と不安にもなる。私にはなんの情報も無いんだもん。
『えっ…、これ、私立った方が良い?』
「ん?いや、キミは座ったままで良いよ。このまま僕に流れを任せてちょうだい!」
ばちん!とウインクをした悟は階段下に顔を向けてる。
「今から"トス"するものを狩り取るから、ちょっと待っててね~!」
……何を?と少し離れた場所に居るウェディングプランナーの女性を向く。彼女ならば式の流れを良く把握してるから悟が何をやらかすかを知ってる。止めないという事はヤバイ事をしないのは分かるけどさ?
視線を向けてもサプライズは平和的なものらしく彼女はニコニコとしてるだけ。
くっそ、わっかんね~!悟にどんな相談を受けたんだ…と少し不安な中、ぺた、とふくらはぎに少し汗ばんだ手が触れたので悟の方を向いた。
悟は地に着いていない膝上に靴を脱がせた私の左足を乗せた後に、片手でドレスをぴら、と捲る。
──イヤな予感を察知。