第35章 縛りの儀
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教会を出た後に立ち止まった私達。下へと階段が続く石畳の通路から下へと教会内の皆がぞろぞろと移動して行くのを見届けて……。
とりあえず、この日に来てくれた皆へのイベントとして、花嫁からの未婚者へのプレゼント…、という事で私からブーケを投げる、ブーケトスのイベントのお時間がそろそろ始まる。階段下からこちらを見上げている位置に参加する女性陣が固まりつつある。
それは未婚女性、呪術師となる前からの友人や呪術師となってからの知り合い達……。皆、今か今かと私の手に持った、縁起の良いものに視線を向けていた。
カラフルなドレスを身に纏い、初対面でも楽しく会話してるようだけど、目がギラついてるのがまた術師関係なくおっかない……。
ねえ、なんか殺気立ってない?今からバトルロワイヤルが始まるわけじゃないんだけれど??
『……つーことで投げるけれど…一般常識内で受け取ってくださーい。
いいですか?もう一度言いますよ?一般常識内、だからね?武器も拳も駄目ですよ?一般常識内で、だかんね?』
その言葉に含まれるのは"非術師も居るんだから呪術を駆使してもぎ取るなよ?"という意味。勝てばよかろうなのだ、という最後に立った者が勝者って事じゃないんだぞ?って事よ?
うんうん頷く私の昔からの友人たちはマナーを守ってって事だろ、とそういう風に捕らえていると思いますが。隣の女性陣、普段呪いをあらゆる方法でボコボコにしてる人達です…。
野薔薇がサムズアップした。西宮は上空を攻めようとしたのを止め箒を立て掛けていた……よし、これなら大丈夫かあ、平和的になるかなと安心感が沸いてきたかも…。
花を彩り、おしゃれに包むブーケを天に突き上げ、少し背後へと振りかぶる。隣から「ちょっ、たくましいね~」という茶化す声は今は無視をしまして。
……言っとくけどシャレオツに投げられんからな??
『行きまーす……それっ!』
ぽんっ、と上空に投げ放ったブーケ。弧を描き持ちやすく加工された部分から下へと落ちていくと、それを我先にと伸びていく手。
急にわああっ!と騒がしくなる中で隣の悟が片手を目元、上に添え、ブーケの取り合いを見てククッ、と喉で笑ってる。
「うわあ~…女って怖いねー!」
『言っておくけど悟の横に居るのもその怖い女の一人なんですけどね~?』
「あーそうだったね。ククッ、それも含め怖い怖いっと!」