第35章 縛りの儀
今回は一体何が絡んでいるんだろう?そう思えば見えない敵が恐ろしくも感じる。原因を私達はまだ何なのかを知らない。真相は高専で捕らえられているであろう、男のみぞ知る…──。
鏡越しの悟は私と視線を合わせている。外からの射光に眩しそうなスカイブルー。数度瞬いたその睫毛さえも派手な蝶の鱗粉みたいに彼の白毛がキラキラしてる。
「今日みたいな事は特別じゃない、いつだって起こりうる事なんだ。
だからこれから先の人生、僕の側から片時も離れちゃ駄目だよ?ハルカ。オマエを守れるのはこの僕、五条悟だけなんだ。ハルカが僕の妻となるのなら夫として守る……愛してるのならアタリマエだろ?」
微笑み細めらたその瞳に、嬉しくなって少しばかり潤んできた。
私はやっぱり、この人が好きだ。こんなにも彼に愛されてる…、悟の側に居ることが私の安心出来る唯一の場所なんだ…!
この場には三人居るというのにまるでふたりだけの空間に感じて、甘い空気の中で胸が高鳴り、涙が溢れそう。
幸せは今だけじゃなくてこれから先に続いていくって彼の側ならそう信じていける。
私の顔に触れていた窓の女性の手が離れ、鏡に映る中で悟を振り返ってる。
「そこ、五条さん!新婦をこの段階で泣かせようとしないで下さい!今はその時じゃないですよ、また直すのに時間押してしまうでしょ!」
「アッハイごめんねごめんねー!……って事で、オマエ、ここで泣くの、禁止」
『……悟も今みたいなの、この場では禁止ね~?』
これ以上愛されたら、胸を満たすものが涙腺から溢れ出てしまいそうだったから…。
控室でのふたり分の小さな笑い声。呪術師だけの秘密の事件の後の仕切り直しはもうすぐで終わる…そして。
……よし、準備は出来た。トラブルがあって少し押してしまった大切な式が、ようやく始まろうとしていた。