第35章 縛りの儀
いや、この場であまりふざけたらハルカにビンタでも一発食らいそうだからここは口に出さないでおこう。
ハルカは少し呆れたように肩を落とし、そして片手を口にくすくすと笑ってる。
『あれを覚えてないとか…!』
「そんな笑う事あったの!?気になる、おせーておせーて!」
這いつくばり、彼女の直ぐ側に近付けばハルカは箸を手にとりまたひとつ…今度は昆布を掴んで僕の口に突っ込む。
親鳥の雛への給餌みたいにそうも突っ込まれたら食べるしか無い。もぐもぐと五条悟の貴重なもぐもぐシーンを見せつけてる中で、ハルカは次の食材を箸に掴みスタンバイしてる。
えっ喋らせない気……?
『お開きしようってなってね、私達…、私は妊娠してるし悟が寝てるしそのままでってなってね、見送りを代わりにお義父さんとお義母さんがしてくれてね……。
寝てる悟を会場から移動させるにも、酔っててヘラヘラ笑いながら千鳥足でしがみつく悟を肩を貸しながらなんとか別室に連れて行こうとしたんだけど…、』
うんうん、と頷く僕。喋れるようになったぞ!と口を開けた瞬間に卵焼き…彩り豊かな具材が入ったものを箸で即座に掴み、遠慮なく僕の口に突っ込んだハルカ。見るに次は赤飯の押し固められたヤツを口に入れてくるつもりらしい…。
『そこでね、禪院家当主のお声が掛かっての、マーライ……ううん、直哉さんが手伝ってくれたわけ』
「うぇ、ふぁいひょうう?(それ、大丈夫?)」
『……飲み込んでから喋れ~?いつも言ってんだろ??』
首を傾げながら笑い、ツッコむ事を忘れない僕の嫁。大丈夫かな、こんな可愛い奥さん…直哉にセクハラされてないかな?
僕が酔ってる間にそんな事があったなんて、しかも千鳥足っていう事は僕は寝ていたんじゃなくて(記憶に残って無いけど)起きていたって事だよね。
ハルカの様子を見るに僕の心配してるような事を直哉にされていないらしく、また口を開けた瞬間に(喋る為に)波型に押し固められた赤飯を素早く僕の口に突っ込むハルカ。
あ、ごま塩既にお赤飯に掛かってるんだ?口に運ばれるものは決して手を抜かれていない、この日の為に寄りすぐりのものを使ってる。小豆もふっくら!
……いや、美味しいけどさあ、どんどんハルカが僕の口に突っ込んでくるから彼女の言葉に口を挟む時間がない。