第35章 縛りの儀
『人前じゃヤだけど。今はふたりきりだし、特別食べさせてあげましょう!ってね。ねー、悟は何から食べたい?』
まさかのイチャイチャタイム突入に一気にテンションが上がっちゃったよね~!
えー、いいの?コレ、ふたりっきりの結婚式じゃん!
「わーいやったー!キミから食べさせてくれるなら何でも食べれちゃう~!」
『はははっ!じゃあバラン食うか~?』
「うわー、それはまごうことなき仕切り!プラスティックは食べられないねー!僕、食べ物が食べたいなー!」
にこにこ笑いながらもちょっとは怒っていそうなハルカ。今はふたりきりだからこれをするって思ってるんだろうけどさ。
……この子、明日ケーキを食べさせあうって事忘れてないよね?でっかいスプーンにケーキ乗せて食べさせても良いかな?
放っておいたら今度は食用菊でも食べさせてくるかもしれないから、僕が指差す桜の形に切り抜かれた煮物を彼女は箸で掴み、口に運んでくれる。
しっかりとだしの染みた煮物。それをよく味わい、飲み込んだ後に『次は?』と僕に聞いてくるハルカ。
「……オマエ、僕に怒ったりしないの?」
『えっ?』
手を止めたハルカは僕を不思議そうに見てる。
「だから僕がさ、お酒飲んで、せっかくの結婚式の最中にオマエの膝で寝ちゃった事。それに、ここまでオマエだけじゃないだろうけど酔って寝ちゃった僕を運んだ事とかさ……」
……静けさ。
その中で衣擦れの音。ハルカが持っていた箸を弁当箱に置いて僕の瞳を真っ直ぐ見てる。少しだけ彼女は笑っていて、その唇の紅がいつもよりも色っぽく見える。
そっか、ガチガチに緊張してた式が終わって普段通りの気持ちなんだ。そのおかげかリラックスするハルカは和装と化粧で色っぽい。ただ微笑むだけだと色っぽいのににこ!と無邪気に笑って、そんなギャップのある彼女にドキドキした。
『そりゃあ、無理してお酒飲んだのは怒ってるよ。飲めないものを無理して飲んで、意識が朦朧としてんだもん。話聞いてないからそうやってやらかしてるんだしさ?
……悟、この部屋に来るまでの事覚えて無いでしょ?』
「来るまでの事?何、その言い方だとまるで僕が歩いて来たみたいじゃん。オマエがここに運んだんじゃないの?」
もしくはここの従業員とか。
全然覚えてねえ…、と頭を掻く。まじで記憶にございません、ってか~?