第35章 縛りの儀
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五条夫妻として、そして呪術師の御三家としてのお披露目…、それが今日の神前式。
こういうのって神社やホテルとかでするものだと思っていたんだけど。その御三家の主の意向でその家でやるってのが通例で。
なのに今回五条家現当主、悟と私との結婚式は、とある料亭で行うという事だった。
……なんで料亭なの?と昨日悟に聞いてみた。それなりに私だって色々調べたけれどさ。もしかして、春日のルーツが禪院だからとか、そういう差別もあるのかな、と心配になって。悟っていうか五条家に泥を塗らないようにかなあ…なんて。
彼はふっ、と笑ってベッドに腰掛け、隣に座る私に答えてくれた。
「五条家の担当する料亭の主が是非ともうちでって頼み込んできたんだよ。
京都は呪術師や呪いの集まりやすい土地、それ故に何度祓っても呪いが集まりやすい。そういう土地でも長年受け継ぐ場所はそう簡単に先祖から受け継いでた人は簡単に手放したくないって思うだろ?だからそういう家と契約して定期的に呪いを祓うんだ。そういうお得意様を担当するのとか、取り決めるのに御三家会議をするんだけどさ。
僕んち、五条家に契約前に神頼みしてた料亭があってね。中庭にハリボテではない立派な神殿を作り分霊を置いて……それでも当たり前に呪いが来るからとうちと契約したの。
今じゃ料亭しながらに特別なお客だけ神前式を許可してるんだ。その特別に僕らも選ばれたってワケ!」
ばちん!とウインクしながらにベッドに腰掛け足の爪を切ってた悟。明日…というか、今日の為にしっかりと準備をしてるというよりもいつも通り過ぎて、彼には緊張って言葉はないのか?と私ひとり緊張する中で呆れていた。多分この人心臓に毛が生えてるわ。
その五条家に呪いを祓ってもらっているという、料亭の控室で白無垢を纏って姿見の前で身支度を松竹梅のトリオに整えられている現在の私。
白無垢、というからただ白いものかと思ったけれど、主に白の生地に細かい刺繍がさり気なく彩っている。以前に採寸だけはしてたけれど、今回の服も、きっと明日の服も目が飛び出るような金額のものなんだろうな、と思うと汚せないよ……。
まさかとは思うけど、料理にカレーうどん的な白い服の天敵、出てこないよね…。