第34章 その男の名は……。
「なら、僕も付き合うよ。つーことで今日はこのままボウリングなんてしに行かない?肉…じゃなかった、エステの時間まで時間余ってるでしょ?」
『おい今肉揉みっつったろ?』
チッ、と舌打ちしつつ睨めば、「イッテナイヨ?」と首を振って慌てる悟。
……今週末にはついに結婚式があるんだ。今日のブライダルエステを済ませて、週末には料亭での式を。白無垢を着ての私の昔ながらの友人や肉親の居ない呪術師間の付き合いでの式を行う。
そして翌日に少し気軽な仲間達や肉親、友人を呼んでの式が。しかもその式ではなにやら悟が「サプライズあるんだけど、どんなものかお楽しみにね?」と何やら企てている模様。
悟のサプライズだしね、嫌な予感もあるけれどこうも色々考えてくれる私の大切な人。その彼のデートの誘いに彼のサングラスの奥の澄んだ瞳を見上げて微笑む。
『ボウリング、行く。点数競おうよ?私が買ったらチェリオ買ってこいよ~?』
「どうしてキミはそうも不良じみた事言うの?どうせお腹すいたら焼きそばパンも所望するんだろ?」
……焼きそばパン、それも良いな…と頷き人差し指をぴっ、と上に向ける。よし、決めた!悟ににっこりと笑って。
『じゃ、私のスコアが悟より上だったらチェリオと焼きそばパンね!買ってこいよ~?』
「それくらい別に良いけどさ、なんか急に可愛い奥さんが尾崎とか聞きながら単車吹かして爆走してるヤンキーにトランスフォームしちゃったなあ……」
片手で首の後をポリポリ掻いてる彼を見上げ、まーたヤンキーいじりしてきたよ…と呆れる。
いいじゃんか、焼きそばパン。美味しいもん。
「……じゃあ僕がハルカにスコアで勝ったらね?」
にこにこと嬉しそうな顔で足を止め、「耳貸して、」と私の耳に片手を添えて小声で囁く悟。
「"愛してる、ダーリン"……って、僕がとろけるくらいあまーい声で言って、ここ、僕のほっぺにチュウね?」
とんとん、と笑顔で頬を指で叩いてる悟。「唇でも良いよ?」と無駄な選択肢を付けながら。
これは私が勝つしかないと心に決めたわ、ぜってえやりたくない…!恥ずかしさの極みプレイやんけ。
この人勝つ気満々で大人気なく本気のボウリングしてくるっしょ。負けねえかんな?絶対絶対、悟に負けてたまるかっ……!