第5章 "好き"が止まらない!
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期待をしていたけれど実際はそこまでではなかった合コンの中。賑やかにチャラ男ズがなんか盛り上がってる中で、私はスタッフを呼び止めウーロンハイとお冷を頼んだ。そろそろアルコールを薄め始めたいと思ったから。明日も学校だ……明日にアルコールを残したくないし。
梅ハイボールが僅かに残るグラスの底の氷で薄まった液体をカラ、と氷同士ぶつかる音を立てて呷り、この盛り上がってる人や静かな人達の様子を見る。真面目君と友人は出来てるとして、今回でめでたくチャラ男1号と隣の子が気があってるような気がする。それ以外はただ相槌したり静かに飲んでたり……。
小さくため息を吐いて、今度は違う友達関係から紹介をしてもらおう、と思いながら私はギィ…と椅子を鳴らして席を立った。
『ちょっとトイレ行ってくる』
「あっじゃあ私もー」
私が席を立つと気付いた友人も早足でトイレに着いてきた。
それぞれ個室に入って手を並んで洗いながら、ちょっと声を潜めて会話をする。ふふ、なんだか作戦会議みたいだなぁ。ほろ酔いで気分がふわふわしてる。席に戻ったら水で薄めていかないと明日に確実に残るぞ、これ。
「ねぇ……ほんとに珍しいけれどどうしたの?ハルカ。髪染めたりイメチェンしたりまた学校行ったり…今回の合コン参加したり…」
それは悪意のない心配。
私は一つため息を吐いた。プライベートでは遊ばずとも学校では悪くなかったし。彼女は私が断っても合コンも何度も誘っていたから。
『いつも断ってたの、父親と兄貴がそういうの許さなかったんだよね。それから最近、ちょっとだけ付き合ってた人が居て…私、その人を振ったんだ。好きだったけれど相手が本気じゃなかったから。だからその気持ちを埋めてくれる人を探そうってね』
鏡の中の私のまとめ髪が少し解れてる。手直しをしながら鏡越しに友人の顔を見た。
そういう事か、と納得して彼女は何度もウンウン頷いている。過去に今の私みたいな経験をしていて共感する所もあったのかも知れない。
「前言ってた家族の事ねぇー…。失恋の穴埋めかぁ~…それ、分かるー!じゃあ今日の様子からして今回の中で気になる人居ないな?」
私に肩を寄せ突き詰めるように聞いてきて、一度頷く。気になる人は居ないのは確か。
『うん、あの中には居ないから今回は見送りで。でも今回、誘ってくれてありがと』