第34章 その男の名は……。
割としつこかった着信。それがその人であればこの私達の関係を知って大人しく出来るわけがない。今は電話だけで済んでいても何れ郵便物とかに切り替えていったり。ストーカー行為へと変わる事だって……。
斜め上を見上げるその青い瞳。首を傾げて不思議そうにしてる。
「んー……話してないよ?でもハルカが妊娠してる事を含め色々知ってたのが恐怖だよね。なんで知ってるんだか」
『まじか……』
「うん、マジマジ」
頷く悟は両手でコントローラーを握り、私の顔と手元を見てから彼もテーブルにコントローラーを置いた。空気読みが出来ない男が珍しく空気を呼んだ瞬間を見たぞ…。
真面目な顔だけれど、優しさを秘めたその表情。テレビ画面はゲームの台詞送りの途中で止まってる。私と顔の近い距離で、最近あったという私の知らない出来事を説明する悟。
「最初電話が来た時に通話に出たんだけどね。開口一番に僕に復縁を求めて、ハルカに子供を堕ろさせて別れろ……ってさ。何度も同じような電話掛けてくるし今、拒否ってんの。
もちろんハルカと別れる事も子供についての事も彼女の思い通りにはしないさ。許嫁じゃ得られない、僕の大切なものはハルカだけだもん。
昔からしつこい子なのは十分に承知してるからね、相手が"窓"の子だからって気を抜かずにハルカを守るよ」
そう言って彼に肩を引き寄せてくっついた体。わしわしと撫でる手が大きくて頼れるのは知ってる。