第34章 その男の名は……。
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昨日、高専内の学長室に突撃した僕。それはハルカに休みをあげたかったから、なんとか気分転換と心身共に休める時間が欲しくて、我儘を爺さんに言って……。何度も我儘を繰り返せば仕方無さそうに条件付きの休みをくれた楽巌寺学長。考えが古いっていうか頭が堅いとは思っていたけれどたまにはいいところあるじゃん。"オマエの為ではなくハルカの為"って言うのには困ったものだけど。
……ハルカに腰だとか肩こりだとかそういうの、治してもらってるの。僕が知らないと思ってるのか?
年齢的にも機能的にも流石にヨボヨボで手を出さないとは思うけれど、今はハルカも爺さんの手土産で喜んでいるし心の広い僕はふたりの関係に突っ込まないけどさ……?
皆が仕事で呪いを祓いに右往左往する中でのたった一日だけの休み。
条件は窓の経営する旅館に住み着いた呪いを祓う事。そうすれば一日フリーってワケ。特級の僕ややるような、等級の高いやつじゃない、放っておくと困るかもってレベルの呪いだ。それならばそこに泊まって、翌日早めに出て仕事に復帰すれば良いんじゃない?そう僕は閃いたワケ。
休みをもぎ取り、呪いの居るその旅館の名前を教えて貰い直ぐに調べた。ネットで調べたら評判がいい所らしいけど人気だからどうしても呪いを呼び込んでしまったみたい。僕らが行き、呪いを祓った後にその旅館に泊めさせて貰えないかを電話で交渉した。
丁度良くキャンセルも出ていて、一部屋キープも出来て。しかもしかも!お部屋に貸切温泉が付いてるヤツ!ハルカの事を考えれば離れ離れでの入浴とか以前に、衛生面も考えれば部屋に温泉があるのは嬉しい事で僕は彼女の意見を聞く前に予約を入れさせて貰った。
寮へと帰り、僕も彼女も連日の仕事で疲れていた。
抱き合った中で眠りに落ちて、最高の眠りの中けたたましい音を必死に止めようとする手がもぞもぞと動く。柔らかなその小さな手を掴んでもう一度布団の中に閉じ込めて。スマホよりも今は僕だけに集中してって朝から独り占めタイム!
……柔らかくて、いい匂いで、安心の塊が僕の腕の中に全て収まっている。
──日に日に妊婦らしい体型になってきた彼女。
僕の子供が出来たのが発覚してしばらくは本当にぺったんこなお腹に人間が入ってるなんて思えなかったのに……。