第34章 その男の名は……。
大切な時間だもん。もう少し、こうして甘い時間を満喫してたいんだけどね~…。
そのまま悟の胸、クリーム色のスウェットにすり、と顔を埋める。悟がもぞもぞと動いて私の頭を優しく撫でていてきもちい。
猫が撫でられてゴロゴロ喉を鳴らす、という行動があるけれど、私が猫だったなら今の悟のスキンシップが気持ちよすぎて絶対に喉を鳴らしちゃう。
「んー…、そだね。呪術師一般では今日も忙しなくお仕事だ。
呪いがいっぱい溢れるシーズン、低級が多いとは言え放置すれば負の感情を集めに集め、どんどん凶悪に進化してしまう。だからみーんな今日もお仕事に振り回されるねー…」
『じゃあ、そろそろ起きて今日も頑張りますかー』
ぴた、と撫でる手が止まった。髪を掻き上げるような指を後頭部に感じながら胸元に埋めていた顔を上げる。
この流れだもん。悟は、やー!とかやだあああっ!って子供みたいに泣き叫びそう。いや、割とそれしょっちゅうされてるんですけれど。
今日も行きたくない!なんて駄々こねるのかな?と思えばにやりとした笑顔。それは何か悪い事を企む子供みたいな小悪魔の微笑み。
「いいえ。がんばら、ないっ!」
『わっ!?』
わはははは!と大きな声で笑いながらぐしゃぐしゃに両手で私の頭を撫で回す、というか髪を掻き乱す悟。
撫でられるのは気持ち良くて好きだけど、こんなにグッチャグチャにされたら髪が長い分、やべえんだけどっ!
悟の乱暴なスキンシップを防ごうと頭上に手を伸ばし、遠慮なくムツゴロウスタイルでの可愛がりをしてくる悟の手を退かそうとした。
なかなかに止まらないハードスキンシップ。こんな撫で方をペットにやったら怒られて噛まれるやつぅ!
「わーっしゃしゃしゃしゃしゃしゃっ!」
『うっわ!本気でやってんな!?こら、やめっ!メでしょ!!やーめーろー!』
「やだ!撫で回したいのっ!朝のイチャイチャフィーバータイム発生してんの!」
『私はジャグラーとか海物語じゃねえよ、変なフィーバータイム発生させんな!
あー、もうっ!ぐっちゃぐちゃじゃねえかっ!いい加減にしてくんない!?くっ、このっ…!
おーっし!悟の両手首、ゲッチュー!』