第34章 その男の名は……。
『その性格も含めて、私は五条悟がいいんです』
「……正気か?」
『それに、悟が嫌だからって離れたら、この子もきっともうひとりの親の姿を追い求めるでしょうし…。そもそも、五条家現当主の息子じゃそう簡単に切り離せないですよ』
悟は五条家、宗家の才能を持って生まれた男。その悟との間に出来た子供……長男であるなら、嫡男という事。
今の悟に絶対にこうしろ!って不満はないから別れる事はないけれど。もし、彼と私の関係が切り離されたならばきっとこの子は父親の姿を追う。
いや、生まれた後に私から取り上げられてしまうのかもしれない……そしたら、本当の母親として私を探してくれるのかな?
そんな事にはならないよね。私も悟も、この子も誰も離れる事の無い繋がりの強い家族でありたいな。例えるのなら、別のモノを繋ぎ止める"鎹"、そのもののようにさ……?
はあ、と諦めたようなため息とがっくりと下げた肩。学長は少し俯いていた。
「蓼食う虫も好き好きとは言うが。五条悟と一緒に過ごしてそこまで幸せそうに振る舞われちゃあ年寄りの心配も不要って事だなあ……」
『でも、心配はありがとうございまーす!』
元気にそう言えば疲れたような顔をした学長は「せめてオマエだけは五条の性格に染まるなよ…?」と別の心配をしていた。