第34章 その男の名は……。
一緒に居ることも、そして今まで彼に何度も救われた実績と、守られる・愛されるうちに今までにない程に本気で愛してしまった事。
何度も恋を諦めようとしたり、やっぱり私にはもったいない人だと離れようとしたり。他に愛する人が居るのだと勘違いして離れようとした事もあった、けれども今はもう悟に負けないくらいに離れたくない、離したくない気持ち。独占欲が生まれた。
──子供が出来たから、そんな理由以上に私の歪な呪いは指輪なんて無くても悟へと向けている。そして彼からも……。
「……なにを。あやつと一緒になるという事は相当苦労をするようになるぞ」
呆れたって口元、でもそういう言葉が返ってくると分かっていたって表情の学長。
『はは……今でも苦労はしてます、けど苦労ばかりじゃないですし私は今の時点で十分に幸せですよ?』
「まだオマエは日が浅いからな…、嫌というほどにアイツの性格を知る事になる」
その言葉に頷いた。悟の性格については出逢って約一年ほど経つ今じゃこれでもか、と知らされてる。
子供みたいに無邪気で、余計なことをして、空気を読まないし相手を見て遅刻ばっかりして。
正直たまにひとりにしてと思うこともあるし、たまに一緒に居て恥ずかしい事をされるから他人のふりをしたいと思うことも何度かあった。
それら全てが呆れる事ばかりじゃない。時にその無邪気さに私だってノるし、元気になる事もある……時々だけどね?
そして何よりも、私をとても大事にしてくれるという事。偽り無く愛してくれているという事。
出逢った時はあちこちの人に向けていた愛の矢印を私ひとりに絞り、色々考えて行動をしてくれる。ピンチの時にいつも駆けつけてくれた、私が死んだ時も愛していなければ放っておけば良かったものを、彼が諦めることが無かったから、こうして私は生きている。
今、当たり前のように呼吸が出来ること・心臓が動く事は悟が一生懸命私の生命力を信じてくれたから。そして、新しい命だって授かった、大好きな悟との間を繋ぐ男の子!
だから、彼がクズだから離婚して他の人と今更一緒になったとして、彼以外の人に今の幸せを貰う事はきっと出来ない。私が一緒になる人は五条悟でないと駄目なんだ、とふっ、と笑ってお腹を数度撫でた。