第34章 その男の名は……。
『しかし意外だなあ、私達周囲の人物名だからボツとはいえ悟がまともな理由を持って考えてた、だなんて』
「……キミは僕をなんだと思ってるのかな?」
二人分の量に沿った水を入れた彼はコンロに鍋を持っていき、私はそこにいくつか乾燥した葉にぷつぷつと爪を立てた葉っぱを二枚入れて蓋をして。
とりあえずはこのまま煮込みましょ、とひと仕事終えた隣の人を見上げた。腰に手を当て私を微笑んで見てる悟。
『で、傑さんと七海さんの案の理由は分かったけど。伏黒は?どういう理由で恵って付けたかったの?』
どういう理由で着けたい!って思ったんだろう?いやこの子の名前は"恵"で決定じゃないけどさ?
よくぞ聞いた、と言わんばかりの表情の彼は胸を張る。
「恵の理由は……」
『はい、』
「……嫌がらせ☆ほらほら、だって赤ちゃんの恵(仮)がお腹すいた!って泣けば恵がおっぱい欲しがってる!ってなるし、気張って顔をしかめてたら恵がうんこした!ってなるじゃん!高専内でそんなやり取りしたらぜってえ面白いって!恵が立ったーって!どこがねん!あはっ!」
『はい、クズー!周辺人物の名前全員却下ね』
私の真面目に考えてるって悟を見直したの、無かった事にしよ!
なにやらブーブー言ってる悟。それを左から右へと受け流し聞かない事にして、私だったら何って名前にしようかな、と水面で浮かびくるくると回ったベイリーフを覗き込む。
振り出しに戻ったな、名前……どういうのがいいんだろう?
カレーを煮込みながらキッチンでふたりして鍋の様子を見つつじっくりと意見を出して考えあったけれど。やっぱり今日だけでは子供の名前が決まる事は無かった。