第34章 その男の名は……。
『そうらしいねー。私も初めて知ったわ……、まさか病院でのエコーでそのうち分かるもんだと思ってたら行って速攻ネタバレ食らうんだもん』
覚悟してなかったから鳩に豆鉄砲って感じで。女の子を先代達は待ってたみたいだけど私にとっては性別がどっちであろうとも嬉しい。どっちに似るのかなー、なんて思考がお花畑になる。
微笑む彼は座ってる私の横で片膝をつき、しゃがみこんで私を見上げた。
「じゃあさ……そろそろしよっか?」
にこ、と笑う悟に何を?なんて聞けない。このタイミングで、しかも色々あって疲れていても彼は"したい"と求めてくるのなら私も付き合わないと。
でも、まだご飯とか作ってないから、悟との事が終わった後始まる前よりも更に疲れてて面倒くせ!ってなるんだよね……。
困惑する私は、目の前の悟の瞳をまっすぐと見た。
『それ、さ……今する事?』
「ん、アタリマエの事言うね~、今する事だろ?重要だもん、こういうのは何度も積み重ねていくものでしょ」
『積み重ねてって…!』
そういって片手を伸ばした彼はぺた、とお腹に手を当ててくる。白い睫毛の隙間から見える優しい眼差し。ゆっくりと撫でる手からは彼からお腹に居る男の子への愛おしさを感じた。
『でっ…でもさ、ご飯作って食べてからとかが良くない?時間も取れるだろうし……』
「なーに言ってんだか!口だけで済むんだからご飯作りながらでも出来るよ?」
『えっなに口でするの?ご飯作りながらとかムリムリムリ!せめてお風呂の後とかさ……』
「……ん?なんか噛み合ってなくね?オマエ、なんの話してるワケ…?」
互いに動きを止めてお互いを見る。悟は撫でてた手で私に手のひらを上に向け、前後に揺らして「先どうぞ?」と優先させ、私に今話してる話題についてを振った。
『え、えっちの話でしょ?今すぐしたいって悟が思ってる、的な……』
「なにキミ欲求不満なの……?」
眉間に皺を寄せ、目を見開く悟。ちょっと私の事馬鹿にしてらっしゃいますぅ?
じゃあなにさ、言ってみろ。
どうせ私がえっちについてと言ったら違いますーセックスの話ですーみたいな事言うんでしょ!……とフン、と鼻息をひとつ鳴らし、彼の次の言動を伺えば悟は表情はそのままで、お腹を撫でるのを再開し話を続ける。