第33章 これは終わりではなく始まりの刻
……ヨミが領域に行けていたならきっと作るペースは早かった。領域にあの人は生前行けなかったから、産婦人科で見てもらうか、流れてしまった時に呪物を作ってたんでしょ……。
「……特級呪物、ハッカイ。内側から出ようとする呪いの執念は凄まじいものだ……、今にも飛び出しそうな呪いなのに、こんな近くにハルカが居ても自ら封印を食い破らないのは呪いの対象の女が春日の女以外、だからかな…」
棚を見てる彼を見て私も釣られて棚を見る。明らかに複雑な組み木、それがよく見えるようにランプを持つ手を棚側へと突き出す龍太郎。木が少し腐敗してたり、カビてる箱は少し頼りない…。
悟はククッ!と片手で口元を覆い笑った。
「なるほどねー……、家守が引き継がれる時、新しい家守に魂の一部を怨霊…いや、呪霊として箱に封印して貰っていたのか…!管理をする春日一族には無害なコトリバコにするって事にして……。
あはっ!ここは例え呪物の箱だらけになっても、一族の家守が含まれる特級呪物がある限りはハッカイまでのコトリバコにも牽制し、春日の女"だけ"は守られるって仕組みを作ってるんだ!」
なるほどねー、と納得してる悟には呪霊さえも視えてるんだと思われる……。私が良く視える目を持っていなくて良かった、と今になって思える。
『守られちゃいないでしょ……、それらを作るのに子供が犠牲になってるじゃん。それに、今の時点で私だけ守られてももう意味はない。ここは龍太郎やマリアが守ってて、悟の家から数人が管理を手伝いに来てるんだから…』
生まれる前から誰かを呪うために道具にされて、また家を守りながら呪霊になってまで箱に縛られ続ける意味なんて、私の居る今の世代には必要ない。
呪いを祓う・呪物を壊す力は領域から出たての今の私には無いから、この場に居る三人の一人、私が今身を守る為に身体をぴったりと寄せている頼れる人物の名前を呼んだ。
『悟、』
「ん、なぁに?」
悟の脇から覗いてた私の頭を片手で、優しくも撫でくり回す彼。
『悟に頼んで良いかな?ここのコトリバコ、全部壊すの…、』