第33章 これは終わりではなく始まりの刻
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地下空間に漂う呪力。見えずともいつ呪いが形を成すか分からない。
この狭く暗い場所に特級呪物三つを含む多くの呪物があるんだ……。悟もあまりふざける事無く真面目でいつもよりも比較的静かで……。先行して奥に進んでいた龍太郎は周囲の警戒をしながらもしゃがんでランプで照らしている。
悟にしがみつきながらその龍太郎が照らすものを見る。彼は素掘りに板を置いただけみたいな、朽ちた木を軋ませる中で割と新しめな将棋盤みたいな箱を照らしてる。一つをそうも照らされれば距離を取った状態でどういう物かが分かった。
……こうしてみれば芸術品だとか、玩具だと言われたら私だってなんだろうって近くに寄って調べたくなるよ…。情報もなく、また箱にあちこち貼られている呪符が無かったら手を伸ばしてた。
「これが、コトリバコ……」
狭い空間故にさほど響くことはない声。龍太郎の誰にとも言えない言葉を悟が拾う。
「それはニホウだね。その箱の中に子供が二人入ってる」
「……見分けがつくのですか?」
見上げた龍太郎に悟は少し低い声で「ああ」と答える。
「コトリバコはその組み木の模様で見分ける。けど、僕にはこの眼があるから、呪力の籠もったふたつの蠢く小さな子供が視えるんだ」
「……蠢くって…封印、されているんですよ?それも水子、となると…」
この場には見えずとも箱の中に居るという事。
……いや、むしろ気になって触れたりしたら呪物からその人物に呪いが手を出すという事もあるのかも…。
気になるその呪物。決して触っちゃいけないんだって理解してるから悟の服を掴んで、影響を受けていない龍太郎の側のコトリバコを離れながらに凝視した。
「うん、そーね。封印は解けてはいないさ。
コトリバコっていうのは簡単に言ってしまうと半受肉の呪霊体だ。
新しい呪符に切り替えてないから今にも貼り付けられたものが剥がれてしまいそうだろ?言ってしまうとこれでマリアに被害が現れる事なく気が付かなかった場合、この辺一体が呪いの地になっていたよ。ひとつの封印が他の封印を解こうと、中の呪いと共鳴してどんどん邪悪な呪いが溢れ出してね……?そうなってしまったら並の呪術師では簡単には対処不可だ」