第33章 これは終わりではなく始まりの刻
「ったくもう!あんた、今呪力がすっからかんなんだから、そこの馬鹿にちゃんと守って貰いなさい!」
「なにさ?あったりまえでしょー!僕が守らなくて誰が守んのよ?」
歌姫の腕から開放後、ふたりを見ればもう少し揉めそうな気配(悟は受け流し歌姫が突っかかるっていうね…)を読み、私はその間に縁側へ。しばらく使われてないのと、きっとよく見えないから足場は悪いってことを考えて靴を取りにさ?
……玄関に行かずにこっちから上がってて良かったよ。遠回りしていただろうし。
自身の靴の他、悟と龍太郎のものを持ち、縁側から主の間へ。龍太郎が押入れからランプを取り出して明かりが着くかを確認してる。カチッ、と音を鳴らしあっという間に眩しい光を出すランプ。昼間でも周囲を木々で覆われた、雰囲気もくらい春日の主の間を明るく照らす光。
彼はそのランプを下げ、私から受け取った靴をペコリと頭を下げてその床下の階段、最上段に靴を置いた。
「ここは先に降ります」
「……気を付けて」
背後からのマリアの一言に頷く彼は明かりを持って先に降りていく。
次に悟が靴を置き、「せっま!」と文句を言いながらも身長の高い彼には大変そうな通路を先に進み、私も後を追うようにその薄暗い通路をゆっくりと進んだ。その私に気を使って中腰な彼はゆっくりと進んでくれている。
杭と平たい石でなんとか足元を階段として形成している通路。結構深いかと思ったけれど声は想像以上に響かない。
最低でも地下空間は敷地内に収まる程度だとは考えているけれど……。
龍太郎が先に行ってるから明かりは先頭に。悟がまるでシルエットクイズみたいになってるのが笑える。
『……後ろから見ると悟、ポケモンのアイキャッチのだーれだ?みたいだなー…』
それも片足をこっちに数段上げてるからさ。
悟でほとんど明かりは遮断される中で私はぼそ、とはたけカカシ~、と呟いた、CM空けの答えがしっかりと悟の耳に拾われていたようでして。
「ぶっぶー、忍者じゃなくて呪術界の最強ですうー!」
『あ、聴こえてたの?』
「聴こえてるよ、大事な大事な奥さんですもん、一挙一動、一文一句、呼吸すらもしっかり耳を澄ませてます!」