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【呪術廻戦】白銀の鎹【五条悟】

第33章 これは終わりではなく始まりの刻


への字口の悟はしゃがんで覗き込む。悟が先程畳を外して更にその下の隠し階段を塞ぐ床下収納を隠す板を外した場所。畳と板を外しただけ……それだけなのに粟立つような寒気が増した気がする。
それでも私はこの、馬鹿みたいに自分達をも消耗して自分たちのルーツを呪った、この春日の罪を嫌々ではなくて自身の脚で降り、全てを見届けないとって責任があるんだ。

明かりの見えない、斜め下に伸びる人一人分の幅の階段がどこまでも黒い闇へと誘うような地下室への道……。
固唾を飲み込んだ後に視線を感じ、横を見れば歌姫と目が合う。

「ハルカ。多分、というよりも領域内の話が本当ならば確実にそこの降りていった先には呪物が存在してるだろうけど。あんた、コトリバコをこれから先、どうするつもりなの……?」

雰囲気たっぷりな地下への細長い空間を見て少しだけ尻込みしてる私に歌姫からの問い。彼女を見ればその明かりのない闇の先を向きずっとそこから目を離さずに私の答えを待っている。

……気温差での風に乗って悪寒を催す気配を感じる、蓋をしても長時間真上で生活をしたからマリアは呪われた。
祖母が死に、今更になって抑えられていたモノが解かれる寸前の呪物達……。

歌姫はこう聞きたいんだ。
春日の一族の主として、一族が続けていた悪習の更なる悪習を続けるか。その呪物を高専に研究なり利用の為に収めるか。それとも……。

こんなもの、これから先残しちゃいけない。それはきっと、上層部に提出しろと頼まれても私は残して欲しくないと考えている。

『……要りませんよ、私には必要ないし誰かを呪いたくもないし。誰かを呪殺するのに自分らの子を使って、呪物を作って…売って……一族とかいう以前に人としての汚点です。
祖母達、"家守"って人らがしたように誰かに渡して呪う手助けにもしたくない、研究だとかサンプルとかに残しておきたくもないですし……』

「……うん、それで良い。行ってきな!……フフ、後で美味しいものご馳走したげるから!」
『うをっ、』

歌姫より肩を勢いよく組まれ、もう片手の伸びた手が私の頭を乱暴にわしわしと撫でる。少しばかり力が強くて私がバランスを崩し少しよろけた所でいつも余計な一言を放つ男が「ゴリラの戯れ」とかいらん事言って私の隣の歌姫が盛大にチッ!と舌打ちをしていた。
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