第33章 これは終わりではなく始まりの刻
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領域から帰り、なんとも言えない微妙な空気のままに縁側で靴を脱いで部屋へと上がった私達。誰もが言葉を無くし、祖母のお通夜以上に今がお通夜の雰囲気になってしまってる……。
領域に行った事により主の間に漂う気配、マリアへの呪いへの元凶についての謎は解けて、ついでにというか体内の奥深くに残った染み付いたような呪いも解呪出来た事は良かったけどさ…。
そもそもの原因……歴代の"家守"が管理していた地下室への隠し階段は、私達が会議をしていた隣の部屋にある。微々たるものでも日々の蓄積で影響を受けたのはマリアのみだけれど、今回は呪いの対象となる女性として歌姫も居る。私に至っては歴代の家守達、祖母までの三人がコトリバコに詰め込まれた呪いとなった一族を制御する為に影響を与えない、というらしいけれど……。
はあーあ!、と声交じりの大きなため息をつく悟。問題が山積みになってしまった中で面倒くさそうに、光を受けると僅かに紫色を魅せる白髪髪をわさわさ揺らして掻いてる。
「婆さんの術式をもぎ取って"貰い受けた"……、といっても今のハルカは呪力を綺麗サッパリ使い切ってるからねー…使うに呪いを寄せ付けないって事は出来ないだろ……」
『はい、今の私は一般ピーポーレベルです……』
しゅん…。
領域への通行料として持て余す呪力全部収めちゃったわけで、蓄えていた分は綺麗サッパリ無くなってる。
呪術師となって始めの頃は領域帰りに溜めた呪力の喪失に慣れなくてふらつくこともあったけれど。今回は久しぶりとはいえ全然ふらつかない、慣れたって事というかなんというか……。
集大成"鎹"から出てきてすぐの私は、他人や私自身の"負"を吸い取り呪力として蓄える事は出来てもアウトプットは出来ないから、新しく貰ったもので(強制譲渡みたいなものだけれど)呪いや呪霊などが私に近付く事を防ぐ様に呪術を使う事が出来ない。
この家で地下に潜らず、地上で悟を待つのが正しいのだとしても、この家の末裔としてなんだかんだ生き残ってしまった私が隠されていたものを見届けるのは、血を受け継ぐ者の定めとしてするべきだと分かってるんだ。
私の意思関係なくだけど、きちんと家守についてやコトリバコについてが伝わっていたのなら、私がここを管理する事にもなっていただろうし(いや、危険な呪物を管理なんてそもそも私、しないけどさ!)