• テキストサイズ

【呪術廻戦】白銀の鎹【五条悟】

第33章 これは終わりではなく始まりの刻


少し離れた場所、ヨミを他の者達が式髪や手足で逃げられないようにと鎹の前で捕らえて居た。暴れていたヨミは観念して、膝が着けども一族達は彼女を離すことはない。
死んだ者達がやっている事に、生きている私達が口を挟むことじゃないな。ただただ、この重大な裁きを傍観していた。

"私よりも後の世代、家を守る家守という役割は褒めよう。生まれ、育ち、永遠に眠る場所を守るのはとても良き事よ。
しかし、生まれ育つべき子孫を生かすことなく殺め、呪殺の為に我が一族を危険に晒す、呪物を作り出す事は何たる事か!許すまじ行為、ここに居る価値などオマエには無い!"

本気で怒っている朱の服を纏う鎹に誰も意見は言わず、ただ頷いている。
……私の母も同じく頷いていた。意見は一緒?ううん。私も今鎹の言っている事に否定的な意見は出ない。男だから、女だからとそれで呪物を作る、だなんて。

──だから、私も裁かれれば良いという気持ちがあった。

唯一意見を言うとしたら、裁かれる本人だけ。
その本人、ヨミは捕らえられながらも可能な限り上半身を顔を前にして鎹に訴える。

"私は、家守としての仕事を、役割を全うしただけで御座います!"

けれどもその叫びも虚しく、彼女の前の役割をしていたものが黙れ、とヨミの頭を掴んで押し込める。振り返る彼女の表情は見えないものの、慈悲を求めるような顔付きだってのはなんとなく分かる。

"その呪いを鎮める為にも、私達歴代の家守はハッカイへ半分の魂を収め、呪いの箱が春日の血族を傷つかないように制止してきたのです!私達は悪くない!
その後継者作りと家守としての責任を放りだし、己の運命と呪物の隠匿をしたヨミのみが罰せられるべきでしょう、初代様!"

跪き、悲痛な声を上げる三代目の女。その女を見て祖母の顔に当てられた布がふわっ…と僅かに揺れる。
頷く朱い着物を纏う鎹が祖母を見下していた。

"血族全員の拒絶を以って、領域からの退去、力の剥奪をさせて貰おうか!この場に居る春日の死者・生者共に拒絶する意思など無いわっ!"

"まっ…──、"

そこまで言いかけた祖母の額に触れた鎹の手。
ボッ…、と炎が消えるような微かな音。彼女はぐずぐずと乾いた泥の作品のように崩れていき、その場には代わりに形作っていくもの。
……長い時を経た、今私達が腰掛けたりしているものと同じ、ボロボロの墓石がそこにあった。
/ 2273ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp