第33章 これは終わりではなく始まりの刻
「かんひもっていうのはコトリバコに少しだけ近いものね。コトリバコほど等級の高いものではないけれど、それでも放っておけば死者は出るし助かっても実例を上げれば、呪いに当てられて四肢の欠損の被害報告が出てる。
コトリバコと同じく子供を素材にした呪物っていうのは共通してるわ。狭い地域での交配の果て……奇形が生まれたらその母が子を殺め、母をも殺してからその地域の者が母と髪で腕輪を、子の骨で珠を作り呪詛の籠もった呪物を作るの。
その地区が呪われないように他の場所に埋める、というのがよく聞くけれど……」
尻すぼみな言葉に今度は悟が言葉を重ねる。
「元々コトリバコもかんひも、どちらも呪物としての発祥とされる地域は離れてる。呪物に子供を使う、というのは両方とも共通してるけどさ。なぜ京都にそのふたつの技術を本家と分家で継承し呪い合ってたのかは不明だ。そこは本家だけの問題じゃないしさ……」
ざりざりざり…という何か、ぐるぐると描いてる最中にパキ、と音を立てて折れた小枝。小さく残念そうに悟が「あーあ……」と言って折れた棒を手にしばらく眺めていた。そのまま見上げるように一本の枯れた木を見てる。
「……──、」
『……悟?どうしたのさ?』
「いや…もしかして……──、」
彼が立ち上がった所で騒動に決着がついたらしい。鎹による"裁きの時が来た!"という声に皆が揉め事をしていた集団へと視線を向けた。家守達…祖母達から離れていく今回初めて一族の汚点を知った大勢の死者たち。
その様子をぼうっと眺めてるマリアや龍太郎。
「……龍太郎。ヨミ様、どうされるのでしょうね…」
「さあ…俺はあの方には世話になった、けれども見ていたものは彼女の全てでは無かったのだしな……俺達は一体何を信じれば良かったのか、なんて…」
私としては始めから信用に値しない婆さんだったけれど、このふたりはひとつ屋根の下で過ごしている。その中での思い出もあっただろうに、隠していた事は思い出をひっくり返すくらいにどす黒くて、真実を隠したせいでマリアは死ぬ一歩手前までいっていた。
この五人の中で一番祖母を信頼していたのは彼だと思う。その彼の大切な人を苦しめたのだから、救いがない。