第33章 これは終わりではなく始まりの刻
『実際に分家に行って見るよりもここで聞いとく?当時呪物を送りつけられた人とか、うちの婆さんが何か聞いてたりするかも……』
これから本家の地下という危険な空間に行くんだ。危険な目に遭う前に聞ける情報は可能な限り聞いておこう。頷く悟は頬をつまむのを止め、その手を口元に添えて、スマッシュ春日シスターズ(?)に叫ぶ。殺し合えないんだ、でも揉める事は出来るからって軽く服だとか髪のつかみ合いして、近付きたくない女の戦いをしているその場所へ向いて。
「おーい!そこの春日団子の中心に居る人~!分家から送られた呪物ってなあに~?」
"──…っ、呪物の製造方法を教えてくれた、者から聞くに…っ、かんひも、と呼ばれていた!…ぐっ、この、"
服や髪を掴み合って揉みくちゃなシーンが少し開けてヨミがそう叫んだ。春日団子に文句を言う隙も無かったみたいで開けた空間は直ぐに閉じて引き続き揉めてる。たまにガキ使とかで見るやつだ、眼鏡とかズレて地べたに這ってたりするの。うちの婆さん眼鏡掛けてないけどさ。
悟はその盛り上がる集団にもう一度声を掛けた。
「サンキュー、サンキュー、ありがとねっ!
……だってサ!コトリバコにかんひも、呪い呪われ…醜い争いだねえ~」
ねー?と悟は龍太郎に首を傾げながら聞くも彼は苦笑いしてる。そりゃあね、あの揉める現場に質問は普通出来ないもん。なんかのバーゲンセールでの取り合いみたいな集まりだよ?
呆れながらも悟を見た。こちとら笑うしか出来ねえわ。
『……その空気を読まないコミュ力は時々凄いと思うよ…凄いと言っても私的に見習いたくはないな!』
「やだあ、そんなに褒められるとくすぐったいなあ!カモン!もっと褒めて!」
「今のハルカの言葉は褒めてねえだろ!」
ふんふん、とご機嫌な彼はノリにノッてまた乾燥した地面にガリガリと描いてる。言葉は充てに出来るけれど描くものは見なくても重要なものじゃないみたい。
良く言って現代アートをひり出してる、楽しむ彼の顔を覗き込んだ。
『……あの、すいません。かんひもってなんですかね……?』
私みたいに言葉の響きだけしか知らず、頭にイメージ出来ないって顔がふたつ。龍太郎とマリアも顔を上げていた。
その私の質問にはコトリバコをふたりに説明していた歌姫が分かりやすく答えてくれる。