第33章 これは終わりではなく始まりの刻
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ガリガリガリ……、と落ちていた枝を拾って枯れた大地に砂埃を立て、何かを書いている悟。それを私含む皆が覗き込むも悟の画力が成すモンだから理解し難い図形だった。コダマのように私達は首を傾げるばかり。
「えーっと、春日家から他所に出て契約とかしてこそ式髪の真価が発揮されるから、人が少なくなり春日家に一族の術師が居なくなる・また育児の為に常に家に待機する人が始まりだった、と……」
……どう見ても今描いたもの、バトミントンの羽なんだよね……と、そのミントンの羽の上に"1"と書いた悟。
……もしかしてこれ、家守の初代って事?
ブフッ…笑っちゃ駄目だ、堪えとこ。
絵についてなにも口に出さず、真剣な顔で描く落書きを皆で見ていた。第二作もなんかガリガリ描いてんなー…またミントンの羽かぁ~?気が付き始めた所で顔を上げ必死に口の中を噛む。耐えろ耐えろ…と丁度歌姫と目があって互いに口元をばっ!と隠した。小さく頷き「……見ないようにしましょ」『その方が良いです…』と意気投合して。
視界の中で白髪がふわふわ動きながら地面に向かってるのを、その芸術的なゴジョウの地上絵を目に入れないように悟の頭上で話す。
「……でも途中から方針転換したでしょう?」
『さっきの責任のなすり合いの言い訳の、です?』
「そうそう、分家からの呪いを込めた贈り物に対抗してって話。コトリバコを作っていたのはお金が欲しくて……って理由は二の次よね?」
ザリザリと描いてる音を止めて悟が顔を上げる。
「うーん、分家も本家の春日家が作っていたようにコトリバコを生産して送りつけて来たのかな?それも保管してる、とか……」
分家となる龍太郎の養子となる前の家については良く知らない。けれども祖母を墓に納める簡単な葬式には分家の人間は来ていたよね。あの夫婦だ…、春日の遺産でも狙ってるんじゃない?って悟が耳打ちしてた……。
その家については春日家の保管庫でも探れば連絡先が分かる…というか、龍太郎に聞けば分かること。でも、この領域内に初代からの血族が居るのなら、その贈られてきたモノがどういうものかを直接知ることが出来る。
片手でむにゅ、と自身の両頬をつまんでる悟を向いた。