第33章 これは終わりではなく始まりの刻
いつも話を聞かないのはどっちだよ、とは喉まで出かけた言葉を抑え、一族達と私達の視線を受けた現在群れから孤立状態となった祖母を見る。
私が彼女を向いたのを確認した悟は、はーあ…、と大きなため息を吐いて(……悪ぅござんしたねっ)祖母に質問を始めた。
「婆さんが死んで現世ではおよそ八ヶ月。そこで春日家に住み込みのマリアが呪いに当てられた。婆さんの部屋に僅かだけど立ち上る呪力。呪物から漏れ出した呪いだ、封印する為の呪力供給が断たれたんだ、漏れ出しもするだろうよ。
男には影響がなく、女の腹に影響が著しく出てんだ。
実際の所、コトリバコ自体は見てないし、込められた呪霊も這い出てきてもいない。けれど春日家の床下、どれくらいの等級のものがいくつあるのか。それを知りたい、教えろ」
祖母や鎹に向けた彼の言葉。しかし、そのふたりの反応……特に鎹に至っては予想外の言葉によってこの騒動の原因は初代から作られたものではないという事が分かってしまった。
"コトリバコ、とは……なんの事だ、ハルカ?"
案の定、初代は関わっていないのか、聞き慣れないというように、単語を聞き返してきた。
その質問に歌姫が答えたように、女や子供を呪い殺す、一族を滅びさせる呪物であると簡単に説明すれば何人もの古い血を持つ者達が罵声を上げる。
さっきまではのほほんとしていたのに感情が激しい人達だと思うよ……。まあ、禪院家からの春日家と切り離すに至った、感情の強い血族だからこそ…なのだろうけれど……。
"なぜ一族を危険に晒すものを家に隠した!?"
"ヨミめ、オマエの娘が春日の滅亡を望んだ原因を作ったのはお前自身なのではないのか!?"
ぎゃあぎゃあと捲し立てるように騒ぐ様はカラスの群れみたい。
一族を途絶えさせる…、"裏切る"という考えを持った母を追い詰めたのはきっと、こういう風だったんだと再現されるように見せられて、どれだけここの時間が長くあろうともこの人達が新しい思考を持つ、という事は難しいものなんだと思わせた。
「……女だらけの空間はこれだから怖いねえ~」
『まあ、うん。どうしてもこうなるんだね……、何度かこう喧嘩する事があったけど今が一番ヒートアップしてるかな……。けれどもどれだけ喧嘩になろうとも一族間で殺し合いみたいな事は出来ないからね……』